研究課題/領域番号 |
21K01544
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
野村 容康 獨協大学, 経済学部, 教授 (90383207)
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研究分担者 |
栗林 隆 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30306401)
山田 直夫 公益財団法人日本証券経済研究所(調査研究部及び大阪研究所), 研究調査部, 研究員(移行) (30638391)
望月 正光 関東学院大学, 経済経営研究所, 客員研究員 (40190962)
高松 慶裕 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90454016)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 直接投資 / 外国子会社 / 企業立地 / 法人税 / 税率弾力性 |
研究実績の概要 |
本研究では、最近における日系多国籍企業の直接投資に与える課税の効果を解明することを目的として、欧州における国別子会社のカウントデータを用いた分析を行った。考慮した税制要因は、各国の法定法人税率、平均実効税率(EATR)、限界実効税率(EMTR) 、配当への源泉徴収税率、減価償却控除規定等である。 分析の結果、立地を阻害する要因の強さでは、おおむねEMTR<法定税率<EATRという順番であり、先行研究の実証結果をおおよそ裏付けるものであった。他方、減価償却控除については、想定通り立地を促進する効果が認められ、特に製造業や卸売・小売業など一定の業種において重要な要因となった。源泉徴収税率は、弾力性は低いものの、他の税制要因と組み合わせて、なお立地には統計的に有意な阻害効果をもつことが確認された。業種別にみた課税効果の強さでは、税率弾力性の推計を通じて、卸売・小売業<製造業<サービス業<金融業の順で、課税の及ぼすマイナスの効果が大きいことが明らかとなった。サービス業とともに、特に金融業で税率の効果が強かったのは、これら事業における固定資産の比重の低さが関連しているとみられる。反対に、卸売業の立地において、税率は重要ではなかったが、その要因として、この業種による海外展開の水平的直接投資としての性格や現地日系製造業の存在が課税の効果を弱めた可能性が考えられる。 本研究の成果は、日系多国籍企業の直接投資が課税要因によって左右されうること、またその影響度合いが業種によって大きく異なることを示唆する。これらの知見は、従来の研究では十分に明らかにされてこなかった点であり、国際課税制度や二国間租税条約のあり方が国内の産業構造に影響を与えうるという意味で重要である。研究の発展に向けて、今後は日系企業の立地と税制との関係について、卸売業や金融業など各産業の特性を考慮した業種別の分析が求められる。
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