研究課題/領域番号 |
21K01546
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
中馬 宏之 成城大学, 社会イノベーション学部, 名誉教授 (00179962)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トヨタ / MES / CAE / 製造現場 / プラスチック成形 / プレス成型 / デジタル化 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響で実地のヒアリング調査が1年延期となり、2022年度になって始めて調査予定の小島プレス工業への調査が開始された。今後、6月にトヨタ九州、7月にトヨタ本体のプレスチック成形ならびにプレス金型の製造現場、装置保全、金型保全、生産技術部門への本格調査が開始される。ただし、2021年度にも、トヨタプロダクションエンジニアリングカンパニー(https://www.tpec.co.jp/)へのオンラインベースでの聞き取り調査を合計で2時間半ほど行うことができた。TPECが担当しているのは、各種現場における量産準備プロセスをデジタルエンジニアリングの側面から支援して、より迅速にリアルでの生産活動を開始できるように側面支援することである。聞き取り調査に際しては、事前に詳細な質問表を提示し、現段階でプラスチック成形やプレス成型の生産プロセスがどれほどまでデジタル化され自動化されているのか、それらのデジタル化・自動化のレベルは中長期的にはどのようなレベルまで進化すると予想できるのか、そのような進化のプロセスで製造現場、装置保全、金型保全、生産技術部門の相互依存関係がどのような方向性をもっているのか、等々について実際の事例を紹介していただきながら検討した。その際の試金石は、自動車関連企業よりもデジタル化という点では20-30年先を行く半導体産業における本主査が長年実地調査を繰り返してきた生産システムである。さらに、時系列的には、20年位前に同一・同種の職場の深い実地調査を実施済みであるため、製造現場を取り巻く技術環境がこの間どのように変化してきたかも検討できた。半導体生産システムとの比較で言えば、CAEの活用は顕著であるものの、プラスチック成形でも金型成型でもMESでさえ未導入だった。ただし、両装置の制御システムが油圧から電動に代わり、現場の変化と異常への対応方法に変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述のように、コロナ禍の影響で実地のヒアリング調査が1年延期となり、2022年度になって始めて調査予定の小島プレス工業への調査が開始された。今後、6月にトヨタ九州、7月にトヨタ本体のプレスチック成形ならびにプレス金型の製造現場、装置保全、金型保全、生産技術部門への本格調査が開始される。小島プレスでの調査は、同社とトヨタ労連ならびに中部産業・労働政策研究会(中部産政研)からの全面協力を得て、4/19日と20日の2日間に亘って深い調査を実施することができた。具体的には、合計で7時間ほどに亘り、まず会社概要の説明、工場見学に続く形でプラスチック成形職場の作業者を束ねる組長さんと班長さんに、主に変化と異常への対応に関する具体事例を交えながら、そして実際の図や写真付きの作業データを示して頂きながら聞き取りを行った。次に、彼らの生産現場の技術的な環境特性をしるために、設備保全と金型保全の担当者への聞き取りを行った。そして、技術動向に関する慧眼の持ち主だと思われる機械保全の担当者の方から、現職場でのデジタル化の程度、社内外に跨がるネットワーク化(含む装置メーカーとのネットワーク)について詳細な説明と将来動向に関する同氏の知見もうかがうことができた。この聞き取りでは、再度現場を拝見する機会も得て、現状使用されている成形機の技術特性やそれらを日々使いこなしている作業者の作業状況や彼らを取り巻く成形機のデジタル化度、成形機間のネットワーク状況、各種成形機が生みだすビッグデータの社内・社外間での活用状況などについて詳しく検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記のトヨタプロダクションエンジニアリングや小島プレスでの調査結果を踏まえながら、トヨタ九州のプラスチック成形職場、トヨタ本体のプラスチック成形とプレス職場に関して、さらなる深い調査を実施する計画である。特に、トヨタ本体では、生産技術部門への調査も含めての実施を考えている。おそらく、小島プレスのようなTier1企業に比べて、さらなるデジタル化・自動化の進展ならびに社内外のネットワークを活用しながら最適化の幅と深さを拡張する試みがなされていると予想されるので、自動車産業における生産職場の中長期的な進化プロセスを検討する上でさらなる貴重な事例を獲得することができると思われる。さらに、トヨタ本体では、生産技術部門の大幅な組織変更が行われ、これまで生産システム自体の開発に重きを置いていた各種部門がより生産部門に近づく形の位置づけとなった。そして、中長期的な生産システム自体は、かなり小規模なモノづくり開発センターが主に担うことになった。ということは、半導体産業に典型的に見られるように、関連装置メーカーや金型メーカー、材料メーカー等々やTier 1との協力関係が社内外に張られたネットワークを通じてより緊密になっていくのではないかと予想される。さらに、このようなネットワーク化が必然的に生みだすビッグデータの活用の仕方も、さらに大きく変化していくのではないかと予想される。従って、今後の調査では、このような生産職場の進化の方向性を見極めるためにも極めて貴重な学習機会を提供してくれると確信している。また、本主査は、半導体産業における生産システムの進化プロセスを間近に観察できるポジショニング確保ができているので、これらの予想される進化方向の妥当性を半導体産業における進化方向との比較の中でより的確に見極めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1043円という繰り越しされたが、少額であるため、消耗品などの物品費として使わせていただきたい。
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