本研究の目的は、出生や教育に関わる行動と家計の属性の関係が国や時代によりどのように移り変わってきたのか実証的に明らかにした上で、その事実と整合的になるよう異質な家計から構成されるモデルを構築し、カリブレートしたモデルを使って公共政策などの効果を定量的に評価することである。 研究初年度である2021年度においては、家計の属性と出生・教育行動の関係についての幅広いファクトをまとめるために、各国の集計データだけでなくマイクロ・データも含めたデータの収集・整理を行った。 それに加え、家庭内での家事・育児・市場労働の時間配分に関する予備的な分析も実施した。American Time Use SurveyとCurrent Population Surveyのマイクロ・データを用いて、家庭内での時間配分が、個人の属性、配偶者の属性、子どもの数や年齢、家計の経済状況などによってどのように異なるか分析し、その結果、一定のパターンを見出すことができた。 また、関連する先行文献の調査も進めた。出生や教育に関して現実に観察されるさまざまな現象を同時に説明しようとするとモデルの複雑化が避けられないが、モデルが複雑すぎると計算量が膨大になりカリブレーションやシミュレーションが困難になる。研究テーマが類似した他の研究を調査することで、こうした問題を緩和するためのモデリングや計算手法の工夫などについて検討することができた。
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