研究実績の概要 |
2022年度は、高等教育の男女格差の逆転現象に関する研究に注力した。この研究は、経済発展の過程で高等教育の男女格差が逆転する傾向があることを、男女の肉体的能力と子育て負担の差異の存在により説明しようとするものである。具体的には、昨年度収集したデータや検討した分析手法を用いて、動学的一般均衡モデルのカリブレーションおよびシミュレーション分析を進めた。その結果、実際に観察された出生率、男女の大学進学率、経済成長などの長期的な推移をある程度再現することができた。さらに、いくつかの反実仮想実験を行うことで、モデルのメカニズムにおいて鍵となる男女の肉体的差異や頭脳偏向的技術進歩といった要素が、高等教育の男女格差の推移に与えた影響を評価することもできた。こうした研究成果を“Fertility Decline and the Reversal of Gender Education Gap”というタイトルで口頭発表した。 また、“Fertility differential, public policy, and development”という論文が、国際学術雑誌Economics Lettersにアクセプトされた。この研究は、経済発展とともに個人の所得と子ども数の関係が変化し、出生率が変動してきたことを説明する上で、子どもに対する政府の公共政策が重要な役割を果たしたことを示したものである。 加えて、アウトリーチ活動として、市民公開講座で「子育てを経済学で考える」と題した講演を行った。
|