研究課題/領域番号 |
21K01553
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研究機関 | 岡山商科大学 |
研究代表者 |
國光 類 岡山商科大学, 経済学部, 准教授 (80737685)
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研究分担者 |
佐々木 昭洋 岡山商科大学, 経済学部, 准教授 (20807713)
熊代 和樹 岡山商科大学, 経済学部, 准教授 (30823124)
三谷 直紀 岡山商科大学, 経済学部, 特任教授 (70219666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 行動経済学 / ナッジ / 高齢期の就労 / 労働経済学 |
研究実績の概要 |
高齢者はヒューリスティックを用いやすく、バイアスを受けやすいことが指摘されている。本研究では、高年齢者の就労参加を促進するために、「介護助手」の名称変更によるリフレーミング効果と、写真の添付による画像優位性効果を検証した。 介護現場では慢性的な人材不足が生じており、高齢者の就業機会として「介護助手」が注目を集めている。しかし、「介護」職は3K(きつい・汚い・危険)などの負の印象が払拭できておらず、「助手」は職位の低さを連想させる。実際には身体介護を行わないにもかかわらず、「介護・助手」とアンカリング(認知バイアス)されることで心理的な参入障壁となっている可能性がある。負の認知バイアスを取り除くことで、介護人材の確保が期待できる。また、高齢者は整理されていない情報を処理することが苦手で、複雑な選択を避ける傾向がある。文字情報よりも画像の方が記憶に残りやすく、求人の効率化が期待できる。 本研究では2種類の求人票を作成し、ランダムに配布した。従来の求人票「介護助手」を見て、詳細情報を閲覧すると回答した者は42.5%であった。そして、名称を変更した求人票「掃除・洗濯・食事の配膳などの補助スタッフ」を見て、詳細を閲覧すると回答した者は44.8%であった。仕事の内容を具体的に明記したことで、求人票の関心度は2.3ポイント上昇した。追加コストをかけなくても、就業のマッチング効率を高める効果が期待できる。 また、画像を添付した求人票を同時に見てもらい、実際に働いてみたいかを質問した。文字情報のみの求人票より、職場の雰囲気が伝わる画像を添付することで、働く意思が増加することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、高齢者を対象とした調査の実施を1年延期した。 2022年度は岡山県瀬戸内市で実施したアンケート調査を基に、複数の視点で分析を行っている。 2023年度は、介護助手のリフレーミング効果および写真の添付による画像優位性の検証を行った。分析結果をもとに学会報告を行ったが、当初の計画より1年遅れいているため「やや遅れいている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、高齢者の就業を促進するメッセージについて検証を行う予定である。 これまで政府やメディアが発信してきた就業促進のメッセージについて、①利得、②損失回避、③同調性、④社会的規範に分類・整理し、それぞれの反応を検証する。各メッセージに対する当事者としての意識、実行可能性を分析する。 高齢者への就労メッセージを効率化することで、健康増進や介護予防などへの啓発に応用できると期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実証分析の精度を高めるため、入力データのダブルチェックを行った。分析結果については、学会報告を行い学術雑誌への投稿を目指す。
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