研究課題/領域番号 |
21K01554
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
林 行成 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (90389122)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公立病院改革 / 地域医療 / 社会厚生 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
研究プロジェクトの開始年度である2021年度では、理論分析のための分析モデルの構築の準備的作業、実証分析のためのデータ構築の準備を主に行った。 まず理論分析については、既存研究の調査を行いつつ、分析のための経済理論モデルの構築を検討した。より具体的には、「α×自己利益+(1-α)×他者利益」とする目的関数を持った医療機関のクールノー・モデルを想定し、初期的な分析を実施した。ここでαは利己心の大きさを表すパラメータであり、公的使命を有する医療機関ほどαが低くなる想定している。本年度では、ある1つの医療機関のαの変化が、他の医療機関や地域医療水準に与える影響を検証し、初期的な結果を得ることができた。今後は、αの大きさや医療機関の規模の多様性を考慮することで、地域特性や市場構造によって公立病院改革のインパクトを明らかにしていきたい。また、公立病院改革を扱った経済理論的分析のなかで、ホテリング・モデルを用いた理論分析が多くなされており、既存研究のサーベイを通してホテリング・モデルによる分析の応用可能性を検討した。 次に、実証分析については、COIVD-19による死亡率について都道府県ごとに地域格差が発生していることに着目して、医療供給体制とCOVID-19死亡率の関係性について基礎的なデータ分析を実施した。死亡率は人口密度などの影響だけでなく、医療提供体制、とりわけ公立病院の病床数シェアの規模に関係する可能性を見出した。各地域で公立病院改革の度合いは異なることから、こうした公立病院改革の内容が、各地域の医療提供体制にどのような影響を及ぼし、COIVD-19への対応力にどのような差異をもたらしたのかを検証するための準備作業として、データと資料の準備作業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、研究出張ができなかったこともあり、当初予定していた医療関係者へのヒアリング調査は実施できなかった。しかし、既存研究のサーベイや資料収集は順調に進むことができた。また、理論的分析に向けた分析枠組みの設計や、実証分析に向けたデータ整備も行うことができ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
理論分析については、2021年度の作業を進展させ、2022年度には論文としてまとめ専門雑誌への投稿・公刊を目指したい。また、公立病院改革について、2021年度に実施したサーベイ研究を踏まえ、ホテリング・モデルを用いたオリジナルな理論分析を実施していきたい。 実証分析については、2021年度の準備作業を踏まえ、2022年度では分析を本格化させる予定である。各地域の公立病院改革の差異が、地域の医療水準や医療機関の経営状況に与えたインパクトについて、実証分析を実施していく予定である。また、可能な範囲で公立病院や公的医療機関の経営者にインタビューを行い、公立病院改革に対する現場の医療従事者の認識について調査も行いたいと考えている。
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