研究課題/領域番号 |
21K01554
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
林 行成 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (90389122)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公立病院改革 / 地域医療 / 社会厚生 / 外部性 / 独立行政法人 |
研究実績の概要 |
研究プロジェクト2年目である2022年度では、前年度の理論分析を踏まえた拡張分析を実施しつつ、地方公営企業年鑑による公立病院のデータの準備を整え、公立病院改革に関する予備的な実証分析を行った。以下、その概要について述べる。 前年度に行ったクールノー・モデルによる理論分析を拡張し、医療機関数一定のもとでの1つの医療機関の公共心の低下が及ぼす地域医療水準への影響を検証した。特に、医療機関間の競争環境の高まり、各医療機関の利益低下を及ぼし、地域全体への医療水準の低下を招く可能性を示すとともに、正の外部性が発生するような領域では改革の負の影響はより強くなることを示した。 また、従前より行っていた医療機関の共同購入に関する研究成果を踏まえ、医薬品の購入に関する公立病院の存在意義について、理論的な分析として一定の成果を得ることができた。具体的には、薬価基準制度のもと医療機関の共同購入行動に制限がかかるなか、公立病院の購買行動が市場価格の低下を低める可能性を示し、その結果を日本医療経営学会、日本医療・病院管理学会において研究報告を行った。 一方、実証分析については、地方公営企業年鑑のデータを用いて、地方独立行政法人、地方公営企業法全部適用への改革が行った病院の地域分析に関する準備的作業を行った。似通った人口や年齢構成などの医療圏を抽出する作業を行い、改革を行った地域と行っていない地域で医療水準にどのような差が生じているのかについて、予備的な検証を行った。現時点では、時系列的な影響などを除外しておらず、十分な分析結果を得られているわけではないものの、来年度に向けての分析準備は整いつつあると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校での業務が想定以上に多くなり、研究の遂行に支障が生じており、研究の進捗がやや遅れが生じている。しかし、理論的研究は予定以上に進んでいたり、新型コロナウイルスの感染拡大も収まりつつあるなか、医療機関関係者へのヒアリングも幾らか実施できたことは大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は本研究プロジェクトの最終年度である。このため、理論的研究、実証的研究について、以下のような最終的な分析を行っていく予定である。 理論分析については、独占的競争市場や寡占モデルによる産業組織論的な先行研究を踏まえた経済理論モデルを通して、公立病院の存在意義や公立病院改革の影響について分析を進め、経済理論から見る公立病院改革の効果について包括的な研究成果としてまとめ、論文化し専門雑誌に投稿まで進めていきたい。 また、実証分析では、2022年度で準備した分析をより精緻化し、特に独立行政法人化の地域に与える効果検証を行う予定である。また、今年度の理論分析の結果を踏まえ、より外部性の強いと考えられる医療領域において、公立病院改革の影響について分析していく必要性が示唆された。このように、理論分析で得られた結果を実証分析によって立証し、より公立病院改革の持つ意義と問題を追及していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の業務が想定以上に多くなり、予定していた研究出張ができなくなったため、当該助成金が発生した。2023年度には、海外も含め当初の予定以上に研究出張を行い、精力的に研究活動を行う予定である。
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