本研究は、公立病院改革が地域医療や他の医療機関にどのような影響を与えるかという研究課題に対し、社会厚生という観点から公立病院の存在意義や公立病院改革のあり方を経済学的に明らかにすることを目的とし、3年間の研究計画で実施した。 最終年度となった今年度では、公立病院の存在が地域医療にどのような影響を与えるのかという視点から、新型コロナウイルス感染症における各都道府県の死亡率と公立病院の整備状況との関係性に着目し分析を実施した。この結果、地域の高齢化率や人口密度は有意には関係しておらず、各都道府県の公立病院の割合が高まるほど、新型コロナウイルス感染症による死亡率が有意に減少することが示された。さらに、人口当たり病院数や病床数よりも、地域における公立病院の病院数割合や病床数割合の方が影響力を持っていることが確認された。このことは、地域の医療提供体制において一定割合の公立病院の必要性を示唆していると考えられ、地域の医療提供体制の公私の割合の重要性を示す結果と考えられる。本研究は論文としてまとめ、HIU健康ジャーナルに投稿し、2024年3月に掲載された。 また、この研究をさらに発展させ、地域における公立病院改革の状況と新型コロナウイルス感染症による死亡率との関係性に注目し、各都道府県における公立病院における独立行政法人化された病院割合との分析を実施した。この結果、独立行政法人病院割合は死亡率に有意には関係しないことが示されたものの、都道府県ではなく2次医療圏や市町村といったより細かく地域を見る必要性、公立病院改革の内容をさらに考慮する必要性などの次なる研究課題が考えられた。こうした研究課題に対してさらなる研究計画を立て、分析を進めていきたい。
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