研究実績の概要 |
本年度は、機関投資家の投資先企業の環境、社会面の活動改善に向けたエンゲージメント活動(直接対話活動)について、そのターゲットの選択と実際の効果を示した実証論文( Effects of Environment and Social Engagements by Institutional Investors, RIETI DP2023)にまとめた。本論文については、2023年度日本ファイナンス学会大会で報告し、コメントに対応して修正した上で、RIETIのDiscussion Paperとして公開し、さらに修正を図り国際学術誌に投稿中である。分析結果として、すでに報告したHidaka, Ikeda, and Inoue (2023PBFJ)の結果と比較すると、機関投資家のエンゲージメントのテーマには最初は資本効率とガバナンス、次に環境・社会面という優先順位があること、環境、社会面のエンゲージメントは環境面ではCO2排出目標や実際の排出量、社会面では女性役員比率に改善効果を持つこと、企業価値に対しても少なくとも負の効果は観察されないことから、環境社会面に正の効果を持つが、エンゲージメントを行う機関投資家の受託者責任に反するものではないことが確認できた。 前年度までの研究成果と合わせると、全体として機関投資家はその性格や制度的背景に応じて投資先企業のESG(環境、社会、ガバナンス)のそれぞれに対して異なる影響を持つこと、ガバナンス面のエンゲージメント活動は投資先業のガバナンスと収益性を改善し、環境・社会面のエンゲージメント活動は投資先企業の環境、社会面の活動の改善効果を持つことを実証的に明らかにした。 研究実績として、国際査読誌掲載1本、国内査読誌掲載1本、RIETI DP2本(国際査読誌掲載論文1本を含む)、国際学会報告1本、国内学会報告2本の成果を出した。
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