本研究の独自性は、日本市場での企業資金調達行動を労働市場の摩擦から解明する点にある。COVID19による景気後退の影響で資金調達をする企業において、社債を大規模に発行する企業と、シンジケートローンで対応する企業があった。労務債務が大きい企業、つまり、賃金への事前コミットメントは企業の利息支払リスクを不況期に更に高めることを考えると、不況期に社債よりも柔軟性のある市場型間接金融を選択する確率は高くなる。本研究成果の社会的意義は、昨今の雇用・労務環境を重視する社会的背景を勘案している点である。学術的意義は、労働市場と企業クレジット・リスク、資金調達選択の新たな関連性を示したことである。
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