研究課題/領域番号 |
21K01569
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆康 明治大学, 商学部, 専任教授 (60361888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マイナス金利政策 / 国債 / 金利スワップ / イールドカーブ・コントロール |
研究実績の概要 |
今年度は次に述べる視点から研究を遂行した。 2023年7月のイールドカーブ・コントロール(YCC)上限の引き上げについて、まず、日銀の市場との対話と報道を通して本件の決定プロセスを検証した。続いて、1月17日・18日に開催の決定会合の結果発表前日である17日と7月27日・28日に開催の結果発表前日である27日における日本国債のイールカーブの形状を比較した。YCCの運用柔軟化に関する日銀の市場との対話は、日本経済新聞と共同通信社による内田日銀副総裁に対するインタビュー記事が主なものであった。メディアによる報道では、28日午前2時の日本経済新聞による「日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案」という記事がYCCの柔軟化という方向を決定付けた。 1月17日・18日に開催の決定会合の結果発表前日である17日と7月27日・28日に開催の決定会合の結果発表前日である27日における日本国債のイールカーブの形状を比較すると、2022年12月のYCC上限引き上げ時に問題となった、8年~9年ゾーンを中心に利回りが10年物よりも高くなるイールドカーブのくぼみは解消されていた。1月17日から7月27日の期間において、10年物国債利回りは3月に米シリコンバレー銀行などの破綻を受け信用リスクが高まった。このため10年物国債利回りは0.3%を割る場面があったが、上限である0.5%を超えることなく推移した。7月28日から9月8日において、10年物国債利回りは概ね0.6%台で推移したが、9月9日の読売新聞が掲載した植田日銀総裁のインタビュー記事を受けて、11日以降、10年物国債利回りは0.7%台に乗せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に3本の論文、令和4年度に2本の論文、令和5年度に1本の論文を刊行済みである。また、3年度に国際学会で1回、4年度に国際学会で2回、5年度に国際学会で2回報告した。
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今後の研究の推進方策 |
長期金利のベースとなる短期金融市場を分析する。また、2024年3月の日銀によるマイナス金利政策の解除に伴う、日銀の市場との対話と金融市場にも焦点を当てる予定である。さらにこれまでの分析結果を総括し、金融政策に関連したインプリケーションを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で国際コンファレンスがオンライン開催となり、海外出張を中止したためである。国際コンファレンスが対面で再会する見込みであるため、アジアで開催される国際学会に参加するための海外出張で助成金を利用する予定である。
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