研究課題/領域番号 |
21K01582
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牛島 辰男 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80365014)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多角化企業 / コインシュランス / 企業価値 / 資本コスト |
研究実績の概要 |
2022年度においては前年度に整備した事業セグメントデータを活用し、多角化の価値を表す超過価値(excess value)と、多角化した企業の事業間で働くキャッシュフローと投資機会の安定化効果であるコインシュランス(coinsurance)の度合いを計測した。サンプルは、2000年から2019年の期間に株式を公開しており、データに問題のない全ての日本企業である(金融機関を除く)。超過価値は企業全体の価値である企業価値(株式時価総額+有利子負債)と部分である事業セグメントの単体価値(セグメント売上高×専業企業のマルチプル)の和の比率として定義した。分析の結果、多角化した企業が同業の専業企業に比べて低く評価される傾向であるコングロマリット(多角化)ディスカウントが、分析期間を通じて発生していることが確認された。また、平均的なディスカウントの大きさは一定ではなく、分析期間内で大きく変化していること、金融緩和の進んだ近年の時期において特に大きなディスカウントが見られることが分かった。
コインシュランスは専業企業の平均キャッシュフローをEBITD(営業利益+減価償却費)、投資機会をQレシオで計測し、それぞれの指標の産業間相関を事業セグメントの売上高をウェイトとして荷重和することにより、企業レベルの指標として計測した。この作業により、事業ポートフォリオの性格に応じて、コインシュランスが働く度合いは企業間で大きく異なることが確認された。
これらに加えて、資本コスト推計のための基礎データの整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資本コストの計測が遅れているものの、超過価値やコインシュランスの計測は予定通りに進行していること、それらを用いた分析は順調に進行しているため、概ね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度においては、多角化の価値が資本市場の状況(ストレス)に応じてどのように変動するか、変動のパターンは企業の事業間で働くコインシュランスによって、どのように媒介されるかを計量的に分析し、成果を論文としてまとめる。関連する研究の発表を内外の学会で予定している。
また、資本コストとコインシュランスの関係性についても分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響が続くことで、予定していた国外出張を取りやめたことが次年度使用額が生じた主因である。研究成果の発表とフィードバックを受ける機会を確保するため、2023年度においては学会報告の機会を当初計画よりも多く持つことで助成金を使用していく計画である。
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