研究課題/領域番号 |
21K01583
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
鈴木 史馬 成蹊大学, 経済学部, 教授 (60583325)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / 主観確率 / 異質的個人モデル / リスク管理政策 |
研究実績の概要 |
本研究は,気候変動に由来する経済的被害が資産価格や経済厚生にどのような影響を与えるのか?また,現実の金融市場において,投資家は気候変動に関するリスクをどのように認識しているのか?について分析する.本研究では,気候変動リスクをある種のレア・ディザスター(Rare disasters, 以下では大惨事と表記)と捉え,大惨事リスクを考慮した資産価格モデルを用いる.従来の大惨事リスクと異なる点は,気候変動は経済活動によって内生的に生じる点と,その経済的な被害の規模について非常に大きな不確実性があり主観的な確率評価が資産価格決定に重要な役割を果たすことにある。当該年度には、主に2つの研究を遂行した。第1に、気候変動に由来する経済的大惨事の確率が炭素税や温室効果ガス削減のための政策的対応により内生的に変化する環境における望ましい政策の特徴づけである。特に、気候変動に対して悪影響を与えるセクター(ブラウンセクター)と、中立的なセクター(グリーンセクター)の二部門からなる確率成長モデルを構築し、大惨事の発生確率が変化する環境における望ましい炭素税と気候変動対策政府支出の組み合わせについて分析を行った。第2に、2019年以降世界経済に深刻な影響を与えたコロナウィルス感染症の流行と、この期間の株式市場、及びロックダウン政策の関係についての理論的分析を行った。コロナウィルス感染症の流行は気候変動とは直接的な関係があるわけではないが、「経済活動によって内生的に大惨事の発生確率が変化する」ことと「不確実性があり主観的な確率評価が資産価格決定に重要な役割を果たす」という点で、気候変動のために開発した理論モデルを応用できると判断したためである。そして、コロナ期の世界的な株価の推移を再現するような理論モデルを構築し、その下でのロックダウン政策の厚生的含意を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
気候変動のための理論モデルをコロナウィルスパンデミックにおける株価と政策の分析に応用した研究が論文として完成した。そして国際学会報告や学術雑誌への出版の形につながった。さらに、コロナウィルスパンデミックを分析するために検討したいくつかの工夫が、気候変動の分析にフィードバックできることがわかった。そのため、今年度については当初の計画を超える進捗があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、引き続き気候変動に関する政策的対応と資産市場の相互作用に関する理論的分析を進めていく。また、可能であれば理論的結果を実証分析につなげるような研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際学会への参加がコロナウィルスの感染症拡大でできなくなったため。採択された学術雑誌のオープンアクセスフィーなどに使用する予定である。
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