研究課題/領域番号 |
21K01587
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
慶田 昌之 立正大学, 経済学部, 准教授 (80401199)
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研究分担者 |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 教授 (20266068)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金融政策 / 情報効果 / マイナス金利 / イールドカーブコントロール / 自然言語処理 / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
金融政策の情報効果について、自然言語処理を用いた分析方法について研究を進めている。研究期間の開始直前に、新型コロナウイルス感染症の影響によって研究代表者の所属大学における在外研修期間の変更が決定し、2020年度の予定が2021年1月から2022年3月までの在外研修となり、本研究開始時期に混乱が生じた。研究代表者と研究分担者はオンラインでの打ち合わせを通じて、本研究の実施に努めた。ただし、購入を申請していたデータ:東京金融取引所「金利先物等商品ティックデータ」は、2022年度に購入するほうが研究の進展状況から望ましいと判断し、購入を先送りした。 近年金融市場において、ESG (Environment, Society, Governance) の課題に適切に配慮した投資が注目されている。このような金融市場の大きな意識の変革が、どのように影響しているかについて関心が高まっている。研究代表者と研究分担者は、ESGがわれわれの研究課題についてどのような影響があるかについて議論を重ねている。 一つの方向性として、これまで金融市場における投資の分析には企業の財務情報が用いられてきたが、ESGの諸要素は必ずしも財務情報に現れるわけではない。企業は財務情報の他に「サステナビリティ・レポート」と呼ばれる投資家向けのESG関連報告書を公表することが多くなっており、これらを分析することが有用である。サステナビリティ・レポートには多様な情報があり、自然言語処理の手法を用いて分析することには一定の価値があると考えられる。このような問題意識のもと、市場に詳しい識者にオンラインでのヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属大学における在外研修期間の変更により、本研究期間の開始時期に進捗の遅れが発生した。この対応も含めて全体の進捗につき、研究代表者と研究分担者で検討した結果、データ「金利先物等商品ティックデータ」の購入を1年先延ばしにすることで、データの可用期間を伸ばすこともできるので、研究計画全体の効率性のためにも良いと判断した。このような判断をしたことで、今年度の進捗に少し遅れが発生することとなった。次年度にデータの購入を実施して、当初の計画に基づいて、研究を進めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って、金融政策の情報効果についての分析を進める予定である。すなわち、データ:東京金融取引所「金利先物等商品ティックデータ」を購入して、Nakamura and Steinsson(2018) などの枠組みを参照しつつ、日本銀行の情報効果について、その存在の有無を明らかにする。また、経済ニュースが日銀の非伝統的金融政策の情報効果をもたらす可能性について、自然言語処理の手法を用いた分析方法を検討しつつ、明らかにしたい。 現在の状況は、新型コロナウイルス感染症の蔓延から回復しつつあるとともに、新たなエネルギー価格の上昇に見舞われて、世界でも物価上昇が始まっている。その結果として、FRBやECBの利上げが開始されて非伝統的金融政策のフェーズから脱却しつつある。このような新しい金融政策の状況を鑑みつつ、情報効果についての分析は重要性を増していると考えられる。 さらに、金融市場の意識の変革が進むことを考えて、情報効果の多面性に配慮してESGなどの社会の変化の影響も加味して、分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ購入の費用を計上したが、自然言語処理の分析について検討が必要で、次年度に使用する可能性が高いと考え、次年度に購入することが研究費の効率的な利用に資すると判断したため。次年度にデータ:東京金融取引所「金利先物等商品ティックデータ」(144万円)を購入する予定である。また、残りについては学会旅費等に使用する。
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