研究課題/領域番号 |
21K01594
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 俊時 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (70221760)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 比較制度分析 / 北欧 / スウェーデン / 職業教育 |
研究実績の概要 |
コロナ禍によりスウェーデンでの史料収集ができなかったこともあり、スウェーデンの職業教育制度についての実証的な研究を刊行することはできなかった。他方で今年度は、特にKathleen Thelenの議論に注目して、スウェーデンにおける職業教育制度の歴史的展開の特質を他国のそれと比較して明らかにするための理論的枠組みを検討する作業で、以下の2つの研究を公刊することができた。 一つは、2021年11月6日に行われた北ヨーロッパ学会大会のセッションⅢ「北欧における職業教育制度の形成史:スウェーデンとノルウェーの比較から」において、Anders Nilsson(Lund大学)とTorgeir NyenおよびAnna Tonder(Fafo)の報告に対し、Kathleen Thelenの比較教育制度史の議論に基づき、デンマークを加えた北欧三国間の職業教育制度の歴史的展開における共通性と差異を明確にすることを意図してコメントを行った。その内容は、「二つの報告に対するコメント」『技術教育学の探究』(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)第25号(2022年3月)p.20-24として公刊された。 もう一つは、Kathleen Thelenの著書”How Institutions Evolve”を横山悦生と監訳し、K.セーレン『制度はいかに進化するか』を大空社出版から2022年3月に刊行した。当該書に収録された解説(378-381頁)は、Thelenの議論をその独自な制度観と各国比較という観点からものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、スウェーデンで一次資料や同時代文献の渉猟ができなかった。さらに、現地のある書店からは日本に書籍を送ることはできないと通知されたように、郵便事情に支障が生じ、本や古本の購入も円滑にできない状況であった。そのため、研究計画では1年目にコロナ禍で現地調査ができない場合も想定していたが、その場合に代わりに行うはずであった作業も十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が収まり次第、本年度の分を含めて現地での史料調査を実行することとしたい。しかし、コロナ禍がいつ収束するかは不明であり、ウクライナでの戦争勃発により、郵便事情などの混乱はまだしばらく続くものと思われる。最低限、手持ちの史料や文献や手に入れることができた史料や文献を十分に読み込み、作業の遅れをできる限り少なくしておきたいと考える。特に手持ちのもので最も充実している国民経済レベルの史料・文献であることを考慮し、そのレベルでの職業教育制度の展開の歴史像をまとめておき、後で産業・企業レベルでの展開をフォローする際の参照点を構築しておくことを心掛けたい。その上で状況が改善したら、その機会を最大限に活用し、これまでの遅れを挽回するという方針で作業を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、スウェーデンでの史料収集ができず、それに関連して旅費等の支出がなかった。そのため、63万円あまりの残金が生じた。それゆえ、次年度にコロナ禍が収束した際には、初年度に調査できなかった分の調査を行う予定である。
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