研究課題/領域番号 |
21K01595
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00334300)
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研究分担者 |
松中 学 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20518039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コーポレートガバナンス / 会社法 / 経営組織 / 会社形態 / 経営慣行 |
研究実績の概要 |
今年度は、主として戦前期の日本におけるコーポレートガバナンスを巡る法制度と経営の関係について検討するとともに、現代における法と経営の関係についても検討した。戦 前期の日本については、本研究でとりわけ注目している株式会社の機関設計と会社形態のそれぞれについて検討を行った。まず機関設計については、森川英正が『日本経営史』他で利用したデータの欠落部分を補完し、新たなデータを加える形で戦前期の大企業における役職別の専門経営者の進出についてのデータセットを構築し、また取締役会における社内取締役の比率や人数を日・米・英で比較した。前者については戦前期に関する他の分析とともに清水が単著「感染症と経営:戦前日本企業は「死の影」といかに向き合ったか」として刊行し、後者については清水が第2回世界経営史会議で報告した。後者の会社形態については、既に検討を行っていた戦前期の出版社の株式会社化についてデータを追加して検討を行った。その成果はやはり清水の著書の一部となっている。 以上については、法と経済学会全国大会の中で上記の著書を中心としたシンポジウムが開催され、その中で清水と松中がそれぞれ招待講演を行った。また、同様のテーマで法と経営学会全国大会において清水が基調講演を行った。 併せて現代におけるコーポレートガバナンスの問題として、取締役会内の多様性の問題を実証的に検討し、多様性=例えば女性取締役の数を増やすことという単純な考え方は適切ではないことを示した。この論文は松中が執筆し、『ジュリスト』誌に掲載された。 これ以外に、戦前期日本における労働法制と経営との関係について論じた清水の論文がAnnals of Business Administrative Scienceに掲載され、閉鎖会社における取締役の選任の合意について論じた松中の判例批評が『判例時報』誌に掲載され ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に述べたように、戦前期の日本におけるコーポレートガバナンスに関する法と経営との相互作用については、機関設計及び会社形態の両面にわたる定性的及び定量的な分析を行っており、総じて順調に推移している。また、比較分析についてはまだデータの収集と単純な分析を行っている段階であるが、既に戦前期における取締役会の構成について、社内取締役の比率や人数を見ると日・米・英で非常に近く、一方で戦後には大きく異なるようになってきており、その意味でしばしばコーポレートガバナンスについて言われる収斂(Hansmann and Kraakman, 2001)ではなく逆の分化が起こっている可能性を見出す等、これについても順調に進んでいる。 現代のコーポレートガバナンスについても、しばしば問題となっている多様性についての検討を行う等、こちらについても順調に進んでいると言えるだろう。また、これ以外に労働法制との関係についての検討や閉鎖会社における取締役の選任の合意についての等も行っており、総じて順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっても変わってくると思われるが、今年度は清水が法社会学の世界的な会議であるGlobal Meeting on Law and Societyにおける報告を予定する等、海外における国際会議報告や調査を開始する予定である。とりわけ、戦前期から戦時期における英国及び米国に於けるコーポレートガバナンスの発展については文献調査を行う予定である。 日本の戦前期のコーポレートガバナンスについては、今年度中に論文をまとめて投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が予想したようには収束せず、国内での研究打ち合わせもZOOM等を利用して行っていたため、旅費の使用が予想よりはるかに少なくなり、また同感染症への対応に時間を取られたため、機材の更新を行わず、当面手持ちの機材で対応した。来年度については機材の更新なども行い、また対面での研究打ち合わせや国外での研究成果報告や調査も再開させる予定であるため、今年度使用していない部分はこれらの費用に充てる予定である。
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