研究課題/領域番号 |
21K01599
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾関 学 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (90345455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経済史 / 戦前の農村・農家 / 消費 / 統計調査 |
研究実績の概要 |
2021(令和3年度)は,使用する歴史統計の資料論的考察を行い,日本経済史と統計調査史とを交差させた形で,戦前日本の農村と農家との「勘定」体系から見える消費の実態について,a) フローとストック,b) ハレとケ,そしてc) 現物消費とこれまでの研究を継続しつつ検討をすすめた.具体的には,「大正初期の山梨県町村是による『村民所得』の推計」(『経済史研究』第19号,2015年)で使用した山梨県の町村是データを利用した食料消費の実態についてb) ハレとケとc) 現物消費の視点からカロリー摂取量推計を行った.現時点では刊行物として発表していないが,b) ハレとケの消費パターンの違いが,カロリー摂取量に影響していたことがうかがえ,この分析を詳細に進めることで当時の農村における食料消費の実態を記すことができると考えている. そして,町村是それ自体の研究については,町村是(島根県など)に記載されたデータの資料論分析とデータ入力を進めた.しかし,島根大学をはじめとする研究機関,図書館,文書館などに所蔵されている資料の調査は,新型コロナウィルス感染症の影響などにより行えなかった.そのため,他府県の町村是(新潟県など)について調査し,一部データの入力を開始した. また家計調査については,明治以降の家計調査の復刻版である『家計調査資料集成』に収録された各種の家計調査について,データの特徴や性質などを検討している.併せて,協調会史料として復刻された『都市・農村生活資料集成』に収録されている資料について,調査方法,調査の実態などをはじめとしたデータの性質を中心に,内容の検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「5. 研究実績の概要」で記した通り,2021(令和3年度)は,使用する歴史統計の資料論的考察とデータ入力とを行い,,戦前日本の農村と農家との「勘定」体系から見える消費の実態について,a) フローとストック,b) ハレとケ,そしてc) 現物消費とこれまでの研究を継続しつつ検討をすすめた.具体的には,山梨県の町村是データを利用した食料消費の実態についてb) ハレとケとc) 現物消費の視点からカロリー推計を行った. 加えて,家計調査について,明治以降の家計調査の復刻版である『家計調査資料集成』に収録された各種の家計調査について,データの特徴や性質などを検討している.併せて,協調会史料として復刻された『都市・農村生活資料集成』に収録されている資料について,調査方法,調査の実態などをはじめとしたデータの性質を中心に,内容の検討を開始した. しかし,島根大学をはじめとする研究機関,図書館,文書館などに所蔵されている資料の調査は,新型コロナウィルス感染症の影響などにより行えなかった.歴史分析における資料調査の重要性を鑑みても,資料調査を進められなかったことは,当該年度に限らず翌年以降の研究の進捗状況へも直接影響するため,現在までの進捗状況が遅れていることは否めない.
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今後の研究の推進方策 |
2022(令和4)年度は,これまでと同様に刊行された町村是や家計調査などのデータ入力を進め,歴史資料所蔵機関での調査による,歴史資料の撮影,資料の複写を行う.これらに並行して,前年度に入力したデータの資料論的考察を行い,当時の人々が認識していた消費の概念を探り出す作業を行う. 上記の作業に並行して,農村については町村是のデータを利用した衣・食・住の消費の経済史分析を行う.また,農家については,刊行された農家経済調査に記載されたデータを検討し,とくに農家に特有の消費行動である現物消費の実態について分析を進める.あわせて研究史における本研究の位置づけを確かなものにするため,戦前期日本農村・農家の歴史資料や文献についても収集を行う. 2023(令和5)年度は最終年度なので,これまで収集した資料の補完などを歴史資料所蔵機関での調査 ,歴史資料の撮影,資料の複写によって行い,あわせてデータ入力作業の補完を進める.また,継続して本研究の分析をサポートするため,戦前期日本農村・農家の歴史資料や文献についても収集を行う).さらに,日本経済史と統計調査史とを交差させた消費の経済史研究として, a) フローとストック,b) ハレとケ,そしてc) 現物消費という3つの視点からアプローチした経済史分析をついて得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症への対応として,資料調査を予定していた研究機関(所属大学以外の附属図書館などの施設),公立図書館,文書館などへ伺うことができず,旅費を執行できなかった.次年度以降は,新型コロナウィルス感染症へ可能な限りの注意を払いつつ,資料調査を実施することで,旅費の執行を進めたい. 具体的には,歴史資料所蔵機関での調査による,歴史資料の撮影,資料の複写を行う.これらに並行して,前年度に入力したデータの資料論的考察を行い,当時の人々が認識していた消費の概念を探り出す作業を行う.並行して,これまで収集した資料の補完などを歴史資料所蔵機関での調査,歴史資料の撮影,資料の複写によって行い,あわせてデータ入力作業の補完を進める.
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