研究課題/領域番号 |
21K01601
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小林 延人 東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (80723254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公債 / 公債担保金融 / 新旧公債 / 加島屋久右衛門 / 鴻池屋善右衛門 / 大名貸 / 債権 |
研究実績の概要 |
明治初期における新旧公債証書の交付を国家による債権の保護と位置付けたうえで、加島屋久右衛門・鴻池屋善右衛門など公債証書の一次受領者による公債担保金融の展開を論じた。 明治維新政府は、明治6年(1873)3月25日に新旧公債証書発行条例(太政官第115号布告)を布達し、一部の藩債を政府の債務として引き継いで(債務引受)、大名貸証文所持者=債権者に対して新旧公債証書を交付した。この新旧公債証書が担保として活用される過程を、実際の貸借関係の中に見出し、公債担保金融の萌芽として位置づけた。 また、この過程において、各種の法令が債権の近代化に果たした意味を検討した。たとえば、華士族平民身代限規則(1872)は、華士族の身代限を認めたため、債権者は債務の履行強制を誰に対しても請求することができるようになった。受取諸証文印紙貼用心得方規則(1873)は、印紙が貼付されていない債券を訴訟で公正な資料として取り扱わないと明示し、以後印紙が貼付された債券はその債務の履行に国家が介入することを表象するようになる。出訴期限規則(1873)は、公正な債権保護を実現するために必要な債権の消滅時効を制定した。一連の法整備によって、債務者の属性に依らない債権の保護が実現し、公債証書(債券)の安全性・流動性が高まったと見られる。 これらは、①大名貸商家の一部が、その後の銀行設立など近代的な資本家へ発展した要因を説明するとともに(経営史的視点)、②国家による債権の創設・保護と金融市場の発展との因果関係を説明する(法制史・金融史的視点)、ものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の成果は、共著3本(うち、2021年度刊行1本、2022年度刊行予定2本)に結実している。ただし、本研究の主たる対象である鴻池屋善右衛門家については、史料調査が十分に進展しておらず、本格的な研究に着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
二年次は、当初一年次に実施するとしていた鴻池屋善右衛門家の調査を、一年遅れで進める。すなわち、公刊書および『鴻池善右衛門家文書』を用いて基礎的な調査を進めることに重点を置きたい。『鴻池善右衛門家文書』は、大阪大学経済史経営史資料室が所蔵しており、「算用帳」「掛合控」など第一級の経営史料を含む。正規に公開される史料を用いて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張を控え、旅費を支出しなかったため。
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