研究課題/領域番号 |
21K01616
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
飯塚 靖 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00514126)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中共事情 / 辰巳栄一 / 河辺虎四郎 / 河辺機関 / 内閣総理大臣官房調査室 |
研究実績の概要 |
本年度は、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター原資料部所蔵の「辰巳栄一関係文書」中の「日記」(1948-1986)を複写し解読を進め、辰巳のインテリジェンス活動の解明を行う予定であった。すなわち、吉田茂首相の「軍事顧問」とも言われた辰巳栄一の動きを彼の「日記」で追うことにより、GHQ参謀第2部(G-2)指揮下に組織された河辺機関の実態、1952年創設の内閣総理大臣官房調査室の内実、さらには在日米軍情報機関、河辺機関、内閣総理大臣官房調査室の三者の関係を明らかにする計画であった。しかし、コロナ禍により資料調査に行けず、新たな資料を入手できず、解読作業が進捗しなかった。 そこで本年度は、これまでに入手した1953年1-12月、54年6-12月部分の「日記」を精査し、他の資料・文献と照合することで、辰巳のインテリジェンス活動の一端を解明することとした。その結果確認できた内容は、辰巳は平日ほぼ毎日米軍関連事務所とおぼしき場所に出向いており、それは河辺機関のおかれた場所であったと考えられる。河辺機関は当初は北区十条の米軍基地内にあり、その後は新橋第一ホテル近くや六本木などの米軍が借りていたビルを転々と移動していたとされる。辰巳はまた、毎週定期的に麹町の沢田ハウス(米軍諜報機関の事務所)を訪れて米軍将校Rと会談を行っており、このRとはウィロビー少将の副官、G2と合同特殊工作委員会(JSOB)とのリエゾン(連絡将校)とされたR・リナルドゥッチ少佐である可能性が高い。一方で辰巳は吉田首相の「軍事顧問」として、越中島(保安庁)、睦隣会事務所、内閣調査室を頻繁に訪問し、顧問としての活動をも行っていた。辰巳が米軍諜報機関側から重要視されていたのは、彼が日本政府関連の秘密情報を握り、それを米軍側に提供していたことにあったのではないかとも考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター原資料部所蔵の「辰巳栄一関係文書」中の「日記」を複写し解読を進め、辰巳のインテリジェンス活動の解明を行う予定であったが、コロナ禍により資料調査に行けず、新たな資料を入手できず、解読作業が進捗しなかった。また、外務省外交史料館での調査も実施できず、「中共事情」の目録作成も進まなかった。ただ、これまでに収集した「辰巳栄一関係文書」と他の関連資料・文献とを照合することで、辰巳のインテリジェンス活動の一端を解明することはできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、コロナ禍の状況が緩和に向かえば東京での資料調査を積極的に行い、「辰巳栄一関係文書」中の「日記」の解読を進め、研究の遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により東京での資料調査ができなかったため、旅費と複写費の支出がなかった。翌年度は本年度予定していた資料調査を実施する。
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