研究課題/領域番号 |
21K01621
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
君塚 弘恭 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (70755727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海港都市史 / 漁業史 / 海域史 / 18世紀フランス / ブルターニュ地方 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、18世紀フランス内陸地域でイワシの主要な消費地となっていたラングドック地方におけるイワシの流通と消費の実態を解明することを目的としている。初年度の2021年度は、ラングドック地方におけるイワシの消費者と消費文化の調査(課題1)、および、イワシの生産ちからラングドック地方に至るイワシの流通ルートと商業ネットワークの解明(課題2)を行う予定であったが、後述するように、Covid19の世界的感染拡大のため、十分な資料調査が行えない可能性が高かったばかりでなく、高い感染リスクにより本務校での教育業務に支障をきたす恐れがあったため、フランスでの資料調査が不可能となった。そのため、申請者は、これまでの予備的調査研究の過程で収集した資料とインターネットで参照可能な18世紀に出版された書籍を用いて研究を続けるものとし、すでに一部収集した史料の分析によって研究可能である「課題2」の研究を中心に進めた。 以上のような理由から、申請者は、ボルドーやロリアン、コンカルノーで塩漬けイワシ交易に関わった商人の記録からラングドック地方へ向かう塩漬けイワシの流通回路を調査した。その結果、次のような成果を得た。18世紀初頭、ラングドック地方の沿岸部においてイワシが減少したが、この地域のイワシ需要は高いままだった。この高い需要を満たすため、ラングドック地方の貿易商人はボルドーとブルターニュ沿岸港に移住してネットワークを形成し、塩漬けイワシの生産と流通全てに関わるようになった。ブルターニュ産塩漬けイワシは、ボルドーからトゥルーズを経由してリヨンや地中海側のセットまで運ばれた。また、研究成果の一部は、"Les activites portuaires de Concarneau au XVIIIe siecle"(「18世紀コンカルノーの港湾活動」)というタイトルで、2021年に出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度の調査研究状況としては、当初の予定から大きく遅れている。その理由は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続いたことである。Covid19の感染拡大により、日本からフランスへの渡航が困難になったばかりでなく、フランスにおいても研究施設の利用やフランス国内の移動について様々な制限がつけられたため、渡航しても十分な調査ができない可能性も考えられた。加えて、渡航した場合の感染リスクと帰国後の隔離措置により、フランス出張が十分な成果をあげられないばかりか、本務校における教育活動に支障をきたす恐れも考えられた。かかる理由により、申請者は予定していたボルドー、トゥルーズ、モンペリエへの史料調査出張を断念した。また、ボルドー・モンテーニュ大学やナント大学に提出された修士論文の調査もできなかった。そのため、現地でなければ入手できない資料が収集できず、前述したように、これまでに収集した史料やインターネットで参照可能な文献を中心に研究を進めざるを得なかった。したがって、生産地のブルターニュ地方からの輸送や輸送コストについては、部分的に解明することができたが、消費地であるラングドック地方における消費者や販売状況については手をつけることができなかった。 ラングドック地方におけるイワシの消費に関する資料は、2022年度以降にCovid19の感染拡大状況を見ながら収集し、分析することになるので、研究の遅れが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、新型コロナウイルス感染拡大のため、研究が遅れている。今後の研究方針としては、2021年度に実施できなかったボルドー、トゥルーズ、モンペリエでの史料調査を、Covid19の感染拡大状況を見ながら、実施する。ボルドーについては、ジロンド県文書館のかなり詳しい所蔵史料目録が存在し、一部はインターネットで参照可能であり、また商業会議所や貿易商人の目録については、事前調査の際に複写しいつでも参照できる状態にあるので、現地調査前にかなり史料を限定できる。トゥルーズやモンペリエについては、すでに収集した文献からの情報では不十分であり、現地で直接文書館で調査することになる。当初予定していた消費者や消費文化に関する調査は、より詳しい調査が必要となるので、この調査は18世紀に出版された文献などの調査の範囲にとどめ、課題3として設定したラングドック地方におけるイワシの需要の変化について、税関で作成された租税記録や貿易商人の記録から分析調査することに重点を置きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、調査出張が全てキャンセルされたため未使用の予算が生じた。2022年度以降の調査出張の費用に充てる予定である。
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