研究課題/領域番号 |
21K01621
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
君塚 弘恭 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (70755727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 18世紀フランス / 社会経済史 / 海域史 / 海産物流通 / 商業史 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、18世紀フランスにおける国内商業に関する研究として、大西洋沿岸から内陸に運ばれた商品としてイワシの商取引に着目し、その主要な消費地であったラングドック地方におけるイワシの流通と消費に関する実態調査を行うものである。新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、2022年度まで、海外での研究出張を自粛せざるをえなかったが、2023年度については、2024年3月に1週間、フランスのトゥールーズにあるオート・ガロンヌ県文書館にて資料調査を行うことができた。また、前年度に引き続き、コロナ前に予備的調査で収集した資料の分析とインターネットで参照可能な18世紀に出版された書籍の収集と分析も行った。 申請者は、主として、コンカルノーやボルドー、トゥールーズを拠点として塩漬けイワシの商取引に関わった卸売商人の残した商業書簡や会計書類を読み解き、その結果次のような成果を得た。第1に、ブルターニュ地方からボルドーを経由してラングドック地方につながる卸売商人のネットワークが明らかになった。その中で、特に、ボルドーの卸売商人アントワーヌ・グロックは、コンカルノーの代理商アリックスを通じて塩漬けイワシの生産にも出資し、生産された塩漬けイワシを海路でボルドーまで運ばせて、そこからガロンヌ川の水運を利用してトゥールーズの卸売商人宛に送るなど、主役的な役割を演じた。第2に、トゥールーズの卸売商人のうち塩漬けイワシを扱った商人は、比較的限定的であり、毛織物を扱った大規模な商人はこの商取引に関わらなかった。申請者は、これらの成果に基づいた研究広告を2024年8月に釜山で開催される国際海洋史学会(IMHA)にて報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の調査研究状況は、新型コロナウイルスのパンデミックが世界的にみても落ち着いたこともあり、フランスの文書館で資料調査を行うことが可能となった。申請者は2024年3月にフランスのトゥールーズにあるオート・ガロンヌ県文書館で資料調査を行い、破産した商人たちが商事裁判所に破産手続の際に提出した書類を参照、収集した。これらの文書は、商業書簡や会計書類を含み、それを分析することにより、商人の取引相手や商品である塩漬けイワシの価格について知ることができた。その結果、18世紀ラングドック地方において塩漬けイワシを扱った卸売商人の持つネットワークや取引の内容について詳しいデータを得ることができた。したがって、ラングドック地方における塩漬けイワシ流通をめぐる商業者についてはかなり研究を進展させることができ、コロナ禍による研究の遅れを部分的に取り戻すことができたと考える。しかしながら、都市内における塩漬けイワシの販売や小売については、データを収集することができなかった。したがって、研究状況としては、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度は、残された課題であるラングドック地方内における塩漬けイワシの販売や需要に関するデータの収集と、これまでに収集したデータの分析を行う。申請者は、2024年3月にオート・ガロンヌ県文書館で資料収集をした際に、18世紀のラングドック地方の地方長官に提出された文書がエロー県文書館(モンペリエ)に所蔵されていることを確認した。エロー県文書館の所蔵目録はインターネットで検索可能なので、これを用いて事前にリストを作成した上で、9月にモンペリエに研究出張をして資料を収集したい。また、都市内での販売については、モンペリエ市文書館でも調査研究を行う予定である。 研究成果について、Covid19の影響もあって、国際学会等で発表する機会がなかったが、2024年度は、2024年8月に釜山で開かれる国際海洋史学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid19の影響により、2022年度まで海外出張ができず、その結果、かなりの予算を使用することができなかった。1部は2023年度での研究活動で使用したが、それでもまだ残っており、その結果、研究期間を延長して2024年に繰り越すことになった。
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