研究課題/領域番号 |
21K01622
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
梅垣 宏嗣 南山大学, 経済学部, 講師 (50709053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イギリス福祉国家 / 国民健康保険制度 / 認可組合制度 / 歯科医療 |
研究成果の概要 |
イギリス国民健康保険制度(NHI、1911~46年)における歯科治療の実態を明らかにした。NHIは、認可組合と呼ばれる民間組織が保険実務を担う形を採っており、各組合は財政的に独立していたため、可処分余剰が豊富な組合と乏しい組合が存在した。そして、前者は加入している被保険者に対して歯科治療を提供することができたが、後者はそれが困難であった。すなわち、組合間の経済的格差が、そのまま歯科治療をめぐる医療格差に直結していたのであり、そうした状況は、国民保健サービス(NHS、1948年~)を通じてようやく解消された。ただし、無料を原則としたNHSにおいて、歯科治療は、最も早期に利用者負担が導入された。
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自由記述の分野 |
経済史(イギリス経済史、西洋経済史)
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的意義は、20世紀前半のイギリスにおける歯科治療について、とくに当時の社会福祉制度の特徴との関連性を明確にしつつ、その実態を明らかにした点にある。すなわち、イギリス国民健康保険制度(1911~46年)は、社会保険制度に自由選択・自由競争・分権的自治といった自由主義的要素を採り入れたが、その結果、認可組合間の経済的格差、ひいては歯科治療をめぐる医療格差が生じたということを明らかにした。そして、こうした事実は、今日の社会福祉制度における効率性と公平性の問題について、自由主義的なアプローチが包括的な解決をもたらすとは限らないということを示唆しており、その点に社会的意義がある。
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