本研究において中小企業の組織変革に関する研究調査対象として、滋賀県と高知県の中小清酒製造業者の事例を対象に調査研究を実施した。中小清酒製造業者の組織変革に関する調査研究を進めるにあたって、清酒自体の製品特性、そこから派生した清酒に関する法的規制によって多大なる影響を受けていることが明らかになった。そこで、滋賀県と高知県の清酒製造業者ならびに関係者に対する調査と並行して、我が国における酒の萌芽期から現在の清酒にいたるまでいかなる革新(イノベーション)が蓄積されてきたのかについて清酒製造業の経営史の観点からイノベーションの類型化を実施している。 研究実績としては、中小の清酒製造業への実地調査については、2021年度に高知県の清酒製造業者2社、2022年度に滋賀県の清酒製造業者1社、2023年度に滋賀県の清酒製造業者1社を対象に行った。清酒製造業におけるイノベーション分析については、2021年度は萌芽期から現在の清酒のルーツとなる南都諸白が登場した安土桃山時代までを分析対象とした研究を実施した。2022年度では、現在におけるナショナルブランドと呼ばれる灘や伊丹に本拠地を置く大手清酒製造業者が創業した江戸時代における清酒製造業を分析対象とした研究を実施した。2023年度においては、科学技術が清酒製造業にもたらされた明治・大正期における清酒製造業を分析対象とした研究を実施した。 具体的な研究成果としては、実地調査に関しては現在も継続中であり論文や研究書という形で成果を発表する段階には至っていないが、イノベーション分析については、研究論文3本を上梓することができた。なお、イノベーション分析については、現在昭和・平成期を対象とした調査分析を実施している。
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