研究課題/領域番号 |
21K01633
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研究機関 | 青森中央学院大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 資源の解剖学的分析 / 企業家の心理的側面 / 相互補完関係 / 個々のアプローチの限界の克服 / 制約対応 |
研究実績の概要 |
東日本大震災や新型コロナウイルスにより当初の目的を実現することができなくなり、失望感や挫折など消極的感情に陥った企業家はどのように資源を活用したのかについて、2021年度資源の活用方法と消極的感情の関係性を考察してきた。このケースに当てはまる企業家は、失敗が特定の資源不足に起因し、尚かつその資源制約が活動全体の制約として認識してしまう思考様式のパターンがある。その結果、この資源の分析方法は企業家の自己効力感を低下させることに繋がってしまう。 心理的側面との関係に関して、人間が自動的に高速で思考するパターン(速い思考)と複雑な計算を用いる思考パターン(遅い思考)を述べたKahneman (2011)の理論に基づくと、企業家は当初の目的を実現できなかった直後「速い思考パターン」で消極的感情に陥ると考えられる。しかし、研究事例の中で数カ月以上の時間が経過しても何らかの出来事でそのことについて思い出すと消極的感情が再び発生することもある。そのため、消極的感情の発生に関しては時間との関係だけではなく、何らかの思考パターンとの関係があると本研究は指摘している。より詳細な考察の結果として、その思考パターンは、1)資源当初の目標の達成(理想)に対するこだわりや過度の執念 2)当初の目標が達成できなかった結果(現実)に対する過度の注目、3)及びこれらの思考の反応として言われる理想と現実とのギャップに対する失望感や罪悪感の維持 である。 本来は資源の発掘、活用を通じて資源制約を克服し制約から脱却しようとする努力をしていくことが企業家にとって大事なことであるが、消極的感情の発生、拡大により企業家は自己効力感も低下するとともに資源の発掘、活用による制約の克服に関する思考も停止してしまいがちである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は計画的に資源の分析方法及び企業家の心理的側面に関する理論を確認し、企業家活動の事例を調査した。それを踏まえ、資源の認知、活用方法と消極的感情の関係性を考察できた。
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今後の研究の推進方策 |
消極的感情だけでなく、企業家の積極的感情と資源の分析方法の関係性を考察していく。具体的には企業家が制約の中で消極的感情を和らげ、積極的感情を芽生えさせることができたのは、資源を細分化し、資源の新たな要素の発掘、活用をすることができたことに起因するのかを明らかにしていく。また、積極的感情のある企業家はより簡単にその資源の分析方法と消極的感情の緩和の過程を実現できたのかを考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2021年度の前半では資源の活用方法と消極的感情に関する文献と関連事例を調査した。2021年度の後半ではデータ分析を行った。データの分析結果を基に本研究の独創性を強調するために、改めて関連図書や文献と比較する必要があった。そのため、前半で多くの関連図書を購入せず、研究図書購入費の一部を残した。また、新型コロナの影響でヒアリング調査と学会発表もオンラインで実施したため、旅費の支出もなかった。よって、未使用金が生じた。 (使用計画)2022年度ではヒアリング調査と学会発表は新型コロナの状況により直接訪問かオンライン実施になるが、それにより旅費支出の有無も変わる。そして、改めて調査結果と関連研究を比較するため、未使用金を研究図書購入に使用する。
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