研究課題/領域番号 |
21K01635
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松本 陽一 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (00510249)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経営学 / 経営戦略 / 半導体産業 / 資源の再配置 |
研究実績の概要 |
本年度実施した研究によって大別三つの成果をえた。 第一に、世界の半導体企業における資源の再配置について、事業の撤退・休止・深耕・参入の4種類の活動がどのように資源の再配置をもたらし、相互に関連しあうのか、またそれらがいかにして経営成果(具体的には利益と企業価値)に結びつくのかを検証した。この研究成果はStrategic Management Journal誌に掲載された。 第二に、上記研究によって、半導体企業において統合型の企業形態(つまり半導体設計から製造まで一環して自社で行う企業)と設計のみに特化したファブレス企業とでは、資源の再配置行動に違いがあることが明らかになった。これは資源の性質によって、再配置しやすいものとしにくいものとがあることに起因していると見られる。このような違いが企業間の競争行動、具体的にはある企業の参入や撤退行動が競合企業の敵対的反応を促す程度に違いを生むのか否かについて検証を行った。この成果はStrategic Management Societyの第41回Annual Conferenceにおいて発表を行った。また、この発表でえられたフィードバックを生かした改訂版を同じくStrategic Management Societyの第42回Annual Conferenceにおいて発表する予定である。 第三に、資源の再配置の研究には、特定の資源が実際に再配置されているか否かを捕捉する部分に課題がある。つまり、実際に再配置された資源を特定するのが難しい。本研究では半導体企業の技術者の移動を特許データを利用して人的資源の再配置を捕捉しようとしている。本年度は特許データの整備を実施し、これを利用した検証作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主たる目標は、企業における資源の再配置について、具体的に再配置される資源を特定し、その移動を捕捉することである。この点について、ここでは特許データを活用し、半導体企業内部で特許の発明者がどのように再配置されているのかを明らかにする。特許データは潜在的には大変有用な情報を含んでいるものの、同時に発明者の捕捉のためには同姓同名の発明者の取り扱いなど、困難なクリーニングの作業が伴う。本年度は、これを実施して本研究課題に利用可能な水準までデータを整備し、実際の分析作業に進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、本年度の成果を踏まえて、大別二つの内容を同時並行して進める。 第1に、企業が持つ資源には再配置しやすいものとしにくいものとがあると考えられることから、それによって企業が競合企業の行動に反応できる(あるいは反応しようと思う)程度には違いがあると考えられる。それによって企業間の敵対的行動(反応)に違いが生じると思われることから、この点の検証を行った研究を引き続き改良していく。 第2に、本年度は特許データのクリーニングを終え、発明者の捕捉が可能になった。これを用いて企業内部で資源の再配置が行われる様子を、発明者の移動によって明らかにする実証作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍の影響で学会がオンライン開催になり、海外渡航費がかからなかったため、当初計画よりも使用金額が少なかった。次年度は海外での国際学会が対面開催となるため、本年度よりも大幅に旅費が増加することが見込まれる。本年度繰り越し分は、その旅費に充てる。
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