研究実績の概要 |
今年度は、前年度までの研究成果である朝岡(2022a)、Asaoka(2022)及びAsaoka(2023)を踏まえ、比較法的な観点を加えるためこの分野の先端的及び実務的な研究を行っている海外の大学の研究者及び国際機関の専門家との意見交換を行った。それを踏まえた研究成果は、論文(Asaoka, 2024)として発表した。 そこでの着眼点は、企業の株主の変化は、直接・間接に企業を取り巻く他のステークホルダーにも影響を与えるという点である。従って、そのような支配権の移動を巡る制度は、アーキテクチャーの一部を構成し、潜在的な将来の変化という意味で、現在における認知にも影響を与える。また、別の観点として、我が国の実際の法制度の立案の際、海外事例が参照されることがあるが、そのような海外との相互作用の存在は、アーキテクチャーの認知をより広範なものに拡張する。 研究期間全体を通じて、朝岡(2021)を端緒としつつ、包括的な成果として、著書であるAsaoka(2022)及び朝岡(2022a)において、企業を取り巻くステークホルダーを俯瞰した上で、株主に代表される投資家と、経営者との間の緊張関係や、その基礎となる法制度を軸としつつ、その根底にある人間の感情、心理や感性を中心に置いた企業のあり方を探求した。特に、判断のための尺度の一貫性と統一性の重要性や、多数の目標を同時に追求することの困難性を強調した。その上で、理論の応用として、朝岡(2022b)によって組織再編のあり方や、Asaoka(2023)によってインフラ投資のあり方にも考察を展開した。 これらの研究を通じて、企業とそれを取り巻く投資家を中心とするステークホルダーとの相互作用の分析や現実の法制度に反映される提案を行った。
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