研究課題/領域番号 |
21K01641
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
奥山 雅之 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (90710096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際経営 / グローカル / 事業承継 / のれん分け / 中小企業 / 地方創生 / 異質性と同質性 |
研究実績の概要 |
本研究は、主に中小企業による海外展開形態としての「越境のれん分け」に焦点を当て、その有効性と課題、および担い手の特性を明らかにするとともに、「越境のれん分け」にみられる特有のマネジメントについて、その理論的枠組を検討する。「越境のれん分け」事例の質的研究を中心に実施し、「越境のれん分け」プロセスの規則性・共通性を探索し、特有のマネジメント手法の理論的枠組について仮説検証を行い、「越境のれん分け」に関する経営理論の基礎を構築する。具体的には、次のステップにより研究を推進する。 初年度である令和3年度は、グローカルビジネスにおける「越境のれん分け」の定義の精緻化である。まず伝統的な「のれん分け」を含めた幅広い文献研究を実施するとともに、新聞・雑誌データベースから「越境のれん分け」に該当する可能性のある事例をリスト化し、予備的なインタビュー調査を行う。伝統的な「のれん分け」は、それによって商家同族団が形成され、本家の経営からみれば事業の量的あるいは地域的拡大を意味する。 また、中小企業のグローカルビジネスは、間接輸出、直接輸出および直接投資の3つに大きく分類されるが、これ以外に、フランチャイズ、コンサルティング、および本研究の焦点である「越境のれん分け」もある。この分類は類型相互間の境界が曖昧な部分もあり、研究の前提として定義を精緻化し、他形態と異なる「越境のれん分け」の特徴を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、日本最大級の海外ビジネス支援プラットフォーム「DIGIMA(出島)」を運営する株式会社Resorzとの共同研究契約(資金提供なし)を締結したため、令和4年度に実施を予定していたアンケート調査が前倒しで実施できたことなど、順調に調査が進展した。 一方、COVID-19の感染拡大により、企業へのインタビュー調査の一部に遅れが出ている。とくに、各地域の国内企業へのインタビュー調査は、企業側の受け入れ態勢が整わなかったこともあり来年度への繰り越しが生じた。 このように、アンケート調査の一部前倒しの反面、インタビュー調査の繰り越しがあることから、計画の一部変更は余儀なくされながらも、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度(令和4年度)は、中小企業のグローカルビジネスにおける越境のれん分けの有効性の検証と課題の抽出である。 現時点で、越境のれん分けの有効性として(1)間接輸出、直接輸出に比べ、現地のきめ細かいニーズに対応できるこ、(2)中小企業の場合、直接投資による方法では、経営者あるいは後継者が現地で陣頭指揮する以外にマネジメント人材の確保が難しいことから、越境のれん分けによれば、海外子会社(直接投資)に比べ現地のマネジメント人材の確保が容易になること、(3)フランチャイズに比べ、現地の裁量が増え、マネジメントの柔軟性を確保できること、を挙げることができる。 一方、越境のれん分けの課題として、(1)越境ゆえに「のれん分け」の対象となる人材(別家)の確保が難しいこと、(2)「越境のれん分け」では本家と物理的距離が離れており、かつ各地域のニーズに合致した柔軟な経営が求められるため、権限委譲が必須であるが、のれん分けを受けた別家を一定程度管理しなければ、本家のブランドイメージを損ないかねないこと、(3)3.一体性の確保、ブランド毀損のリスク、収益の配分やノウハウ料などの取り決めが曖昧になりがちとなること、などが指摘できる。 こうした有効性の検証や課題への対応策も、今年度のインタビュー調査やアンケート調査によって一定程度は明らかになったが、まだ、理論を一般化するほどには精緻化できていない。今後は、共同研究先である株式会社Resorzとの協力によるインタビュー調査に加え、独自のインタビュー調査を実施するとともに、COVID-19の感染拡大状況をみながら、今年度の繰り越し分を含めて国内外企業へのインタビューを実施し、越境のれん分けの有効性の検証と課題の抽出を図っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究先からのデータ提供があったため、アンケート調査の予備費が節約された。この節約分は、次年度に繰り越し、日本の特産品生産・販売団体へのアンケートを実施・分析する経費として使用する予定である。 また、COVID-19の感染拡大により、企業へのインタビュー調査の一部が実施できなかったことにより、旅費などが十分活用できなかった。これについても、COVID-19の感染拡大状況をみながら、次年度に繰り越して、企業へのインタビュー調査の経費として活用する予定である。
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