本研究の目的は日本の上場会社において、最高財務責任者(Chief Financial Officer、以下 CFO)を有する企業の属性を調べ、CFOの存在が企業のパフォーマンスに与える潜在的な影響を調べることである。理論面では、日本の企業組織に特有な文化や制度などから組織行動を論じる「組織理論(Institutional Theory)の 」の視点から、CFOを擁する企業と擁しない企業を比較する仮説を立てた。仮説検証にあたっては、日本の上場企業の2017~2021年にわたる役員データと財務データを集め、パネル・データを構築し、統計的手法で仮説検証した。主な結果として、サンプル期間では上場企業のうち約10%の企業にCFOが置かれていた。この結果は、1990年代後半から米国の上場会社の殆どがCFOの役職を設置していることに比べると、対照的に少数であるという点が明らかになった。次に、仮説検証を通じて、CFOを擁する企業の特徴として明らかになったのは、比較的新しく設立され、子会社数、海外売上高が大きく、英語での情報開示に積極的であり、メインバンクの持株比率が低いことである。また、CFOを擁することによる企業パフォーマンスの影響については、株価を考慮した経営指標については、正の影響がある一方で、会計基準による業績への影響は見られなかった。以上の成果を最終年度には国内外の査読付き学術学会で発表を行い、参加者より様々な改善点を指摘された。これらの意見を参考に研究の再吟味を行い、最終的には国際的学術誌へ投稿する予定である。
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