研究課題/領域番号 |
21K01652
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
涌田 幸宏 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30255020)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サステナビリティ / 企業家活動 / 新制度派組織論 / 制度ロジック / 制度的多元性 / ブリコラージュ / ビジネスモデル |
研究実績の概要 |
本研究は、社会の持続可能性を志向した企業家が、経済的・商業的ロジックとサステナビリティ・ロジックの競合するロジックをどのように両立させ、ビジネスモデルを構築するのかについて明らかにする。このため、初年度は、サステナブルな企業家に関する先行研究を整理し、研究課題を明確化し、分析のフレームワークを構築することを目的とした。 先行研究では、サステナブルな企業家活動の特徴は、企業それ自体の発展を目指すのみならず、多元的なサステナブルな価値を実現するための装置・道具として企業組織やテクノロジーを位置づけることにある(永続的推論)ことなどが指摘されている。しかしながら、企業家が直面する問題は、前述した制度的多元性によるコンフリクトである。このため、企業家は、多元的・競合的ロジックに対処するため、ビジネスモデルの逐次的・段階的刷新が行われることが先行研究の検討から示唆された。多元的なロジックによるコンフリクトは事業の拡張とともに出現する。この際に、既存のビジネスモデルで蓄積された資源・テクノロジー、ネットワークが見直され、ブリコラージュ的に利用される。さらに、こうした資源やテクノロジーの組み替えを適切に遂行する上での指針となるのが、企業家が保持している根源的な価値であることも明らかとなった。「サステナブルな企業家活動は、価値主導的な資源・テクノロジー、能力の組み替えによってビジネスモデルを段階的・逐次的に変化させ、制度的多元性のコンフリクトを克服していく」ということが先行研究の整理からの発見事項である。 なお、この成果は、「サステナビリティを主導する企業家活動についての考察;制度的多元性とビジネスモデル構築の観点から」として、『経営哲学』(経営哲学学会)Vol.18 No.2にて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は先行研究の整理と分析フレームワークの構築を目的としており、その成果を学会誌に投稿し、掲載することができた。ただ、コロナ禍のために、企業家に対するプレインタビュー調査がやや不十分という結果となったことが「おおむね順調」という理由である。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度は、初年度の成果をうけて、企業家へのインタビュー調査を行う予定である。まず、対象となる企業家を選定する作業から開始する。調査では、半構造化調査によって、①起業の経緯、②制度ロジック間のコンフリクトとその解決、③ビジネスモデルの構築方法、などについて明らかにする。特に、先行研究では、制度的多元性のもとで、斬新的にビジネスモデルをどのように刷新し、資源獲得に向けて正当性の手段としたのかに関して、課題が見られたため、この点を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、企業家への対面によるプレインタビュー調査が不十分だったため。
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