研究課題/領域番号 |
21K01656
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
島内 高太 拓殖大学, 商学部, 教授 (30450034)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人材育成 / 研修 / 副次的効果 / 指導員の成長 / ラーニング・バイ・ティーチング / 関係発達 / 共育 / 企業内訓練校 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、社内研修の指導員が指導のプロセスから学びを得て成長するという人材育成の副次的効果を明らかにし、企業がそうした効果を組織的に活かしていくためのマネジメントのあり方について研究することである。つまり、受講者の成長という研修の直接的効果と指導員の成長という研修の副次的効果の両方を促す複眼的な研修マネジメントの研究である。 そのため本研究では、こうした社内研修マネジメントを行っている典型事例として大手自動車関連企業13社の企業内訓練校を取り上げ、指導員経験者と訓練校責任者の双方から情報を収集(書面調査及びインタビュー調査)し、指導員経験を通じた成長メカニズムとそれを組織的に活かすためのマネジメントのあり方を明らかにするという方法を採用している。 R3年度は、人材育成の副次的効果に関するフレームワークの検討と事例研究を行い、拙著(島内高太『企業内訓練校の教育システム―連携と共育による中核技能者育成―』晃洋書房、2022年)を出版した。そこでは研修を、指導者と受講者の「教授学習過程」であるとともに両者が相互に影響を与えながらお互いに成長する「関係発達過程」であるとし、指導者が受講者を教育し成長させると同時にその過程で自らも成長することを「共育(ともいく)」と定義付けた。 R4年度は大手自動車関連企業5社の訓練校責任者に対するインタビュー調査を行うとともに、そのうち3社からは指導員経験者の書面調査、1社からは現役指導員のインタビュー調査にご協力頂き、その成果を盛り込んでR4年10月に労務理論学会関西・近畿部会で研究発表を行った。調査した企業の訓練校では、指導員を成長させて現場に返すという明確な指針の下に教育体制を構築している点で共通しているが、指導員在任中の現場人材をどのように成長させるかには多様性があるようで、R5年度はその類型化ができるように調査研究を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、大手自動車関連企業13社の企業内訓練校を対象として、①指導員経験者に対する書面調査を通じて指導員経験を通じた成長メカニズムを明らかにする、②訓練校責任者に対する訪問インタビュー調査を通じて研修マネジメントのあり方を明らかにする、という2つの調査研究を進めている。 しかし、R3(2021)年度は新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあって訓練校責任者への訪問インタビュー調査が実現できず、その結果、指導員経験者に対する書面調査の実現も難しくなってしまった。R4(2022)年度は、大手自動車関連企業5社から協力を得ることができ、訓練校責任者に対するインタビュー調査や指導員経験者への書面調査なども進められた。単年度の研究活動としては順調なペースであったと言える。しかし、研究機関全体の進捗状況としては、やはりやや遅れている。R5(2023)年度は、成果の取りまとめと学会での研究発表に集中的に取り組む予定であったが、当面は、調査研究に注力したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については、基本的には当初の計画に沿って大手自動車関連企業の訓練校に関する調査研究を継続していく。R4(2022)年度には5社からの協力が得られたようにいわゆるコロナ禍の調査研究への影響(とくに企業の調査協力受け入れへの影響)は落ち着いてきている。R5(2023)年度はより多くの企業から協力が得られることが期待できる。 そのため出来る限り対面での訪問調査を、訓練施設や生産現場の見学等も含めて進めていきたい。ただし、情報収集のペースをあげるためにも、先方からの依頼があればテレビ会議システム等を利用したオンラインのインタビューも活用して研究を推進していきたい。 また、自動車以外の業種にも視野を広げて「研修指導員経験を通じた成長」という本研究のテーマを考察可能な事例を積極的に収集し、当初予定の研究を補足していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3(2021)年度は、本研究の柱となるインタビュー調査および学会参加のための出張を実施できなかったために、国内旅費の未執行によって大きな残額が生じた。 R4(2022)年度は、前年度の繰越額と当該年度の直接経費の合計額を元手に調査研究を進めたことから、調査出張の機会は増えたものの、再び残額が膨らんだ。R5(2023)年度は、インタビュー調査のための出張機会が増える予定であること、また学会大会の対面開催の出張機会が増える予定であることから、研究費は主に国内旅費として執行する予定でである。 なお、R4(2022)年度はインタビュー調査の音源をスマホアプリやフリーソフトでデジタル文字起こしをして利用することを試みた。しかし精度が高くなく、かえって修正等に手間がかかってしまった。今年度は、前年度の分の音源のテープ起こしも含めて、その他の項目での研究費執行も予定している。
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