研究課題/領域番号 |
21K01667
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
奥野 明子 甲南大学, 経営学部, 教授 (20319784)
|
研究分担者 |
大内 章子 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20335110)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 育児休業 / 人事評価 / 仕事配分 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
2022年度の主要な研究実績は、育休を取得した男女を対象として行った調査と、その分析である。調査は、株式会社インテージに依頼して、現在の会社に入社後に出産した女性、ないしは現在の会社に入社後配偶者が出産した男性を対象にWebで行った。調査期間は2022年3月1~3日、依頼数は3847サンプル、有効回答数は2067サンプル(回収率53.7%)であった。 この調査結果を利用し、男性の育休取得者と非取得者について、育休取得前後(非取得者については子供の誕生)の仕事配分と人事評価をそれぞれ比較した。その結果、男性の育休取得は、復職後の仕事配分には影響を与えないが、人事評価は復職後にマイナスとなる傾向が見られた。ただし男性の育休取得期間は1ヶ月以下が半数をしめており、女性のそれと比較すると非常に短い。そのような違いは、男女の育休取得者を比較するとどのような違いがあるだろうか。22年10月から施行された改正育児介護休業法は、男性育休取得の推進がその目的の一つである。男性育休が復職後の仕事環境に与える影響を分析することは、その一助となる。女性活躍推進にとって、男性の育休取得、そして家庭における「男性活躍」が不可欠であることは言うまでもない。したがって、男性の育休取得に関する研究は女性労働研究として意義がある。 さらに、男性の育休取得が復職後の仕事環境に与える影響を明かにすることは、女性のそれとの比較において必要である。これまで、女性の育休取得が、復職後の仕事配分や人事評価にマイナスの影響を与えることが先行研究で指摘されてきた。男性育休でも同様の影響があれば、育休取得そのものの影響と言える。しかしながら、男性育休取得には見られない影響が女性育休取得の場合のあるならば、それはジェンダーによるものであり、解消されなければならない。次年度以降、このような男女比較を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は海外での学会発表を計画していたが、コロナ禍において海外での学会発表の機会を失っている。また、調査からは育休取得に関する2000超の比較的規模の大きいデータを得ることができた。特に男性の育休取得者345、さらにそのうち短時間勤務者117という男性の多様な働き方に関するデータとしては貴重なものである。そのようなことから、当初予定されていなかった男性育休および男性の短時間勤務に関する分析を加えたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は実施した調査データを、男性について育休取得者と非取得者の比較を行った。2023年は、男女の違いを見るために、男性育休取得者と女性育休取得者について、復職後の仕事配分と人事評価の違いを分析する。 また、調査データは男性の多様な働き方に関する貴重なものであることから、男性の短時間勤務に関する分析を行う。つまり、調査データは、育休を取得した男女、育休取得後短時間勤務をした男女、育休も短時間勤務もしなかった男女と合計6グループに分けられる。これらの間で、復職後(子の誕生後)の仕事配分と人事評価の変化を比較する。その結果、育休取得の有無、それに加えて短時間勤務の有無、それらの男女差を明らかにすることができる。 育休や短時間勤務の実施が、復職後にマイナスの影響を与えないような施策が必要である。加えて、これらの多様な働き方の影響が男女で異なるならば、それはジェンダー・バイアスによるものと考えられるため、それを解消する施策も必要である。そのための具体的な施策を提示する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度には研究成果の海外学会での報告を計画していたが、コロナ禍の影響で海外学会での報告を取りやめた。また、研究全般において、インタビュー調査やセミナー・ワークショップの実施などができなかった。セミナーやワークショップは、ワーキングマザーから自らの経験や、我々の研究過程に対する率直な意見を聞く場である。そのような場が得られないことは、研究の推進力を弱めることにつながった。今年度はセミナー、ワークショップを開催し、研究成果を広く実務の現場に伝えると同時に、現場からのフィードバックを得る。また、論文だけではなく書籍出版も検討したい。
|