研究課題/領域番号 |
21K01675
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
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研究分担者 |
井川 浩輔 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (80433093)
開本 浩矢 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90275298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 集団レベルの心理的資本 / 研修 / ポジティブ・アプローチ / 尺度開発 / 医療組織 |
研究実績の概要 |
本研究課題の主題は,ポジティブ実践における挫折経験と無気力感の間のネガティブな影響に,集団レベルの心理的資本がいかに調整変数として機能するかである。そこで,初年度にあたる本年度は,①研究主題の中核的な概念である「心理的資本」に関する研究蓄積の収集と整理,②研究代表者が実施している心理的資本を高める研修内容の記述的検討を行った。具体的には,以下のとおりである。 第1に,心理的資本に関しては,系統的レビューに向けて,海外ジャーナルの収集と整理を実施した。研究者の主観的な視点で文献の選定と検討を行うナラティブ・レビューとは異なり,系統的レビューは定量的な指標に基づき,関心を持つ研究テーマで注目されている研究トピックスや論文間の共引用関係を客観的に析出する手法である。我が国において心理的資本に関する既存研究が極めて少ないことから,人文・社会科学分野の欧文文献を中心に系統的レビューに耐えうる数の学術論文を幅広く収集し,体系的に整理した。その際,系統的レビューの研究業績が多い研究者から専門的助言を受けた。 第2に,心理的資本向上を目的とした研修については,研究代表者が携わっているA大学附属病院の看護師を対象としたポジティブ・アプローチに基づく研修内容の具体的内容と心理的資本開発に資するメカニズムを検討した。今後,日本版集団レベルの心理的資本尺度を開発し,その信頼性と妥当性,効果検証の基盤となる研修となるため,初年度に記述的にまとめておくことは意義がある。これに関しては,研究成果に記載の『戦略的医療マネジメント』として公刊できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり,本年度は文献レビューを中心に行う予定としていたことから,計画通り順調である。系統的レビューの成果については,公表に向けて目下論文化を目指している。先行研究の渉猟とあわせて,尺度開発の専門家よりレクチャーを受け, 日本版集団レベルの心理的資本尺度の開発に向けた準備も進捗させている。こうした本研究の基礎となる研究を積み重ねられたことは,次年度以降の質的・量的調査をスムーズに展開することに寄与しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究が計画通り進捗しており,研究計画の大幅な変更の必要性はないと考えている。次年度以降,インタビュー調査や質問票調査の実施に向けて,リサーチ・サイトとの調整を進めていく。ただし,COVID-19の状況により,調査が予定どおりに進まない可能性がある。その場合は,次年度については,日本版集団レベルの心理的資本のアイテムプールを文献から抽出する作業を研究分担者と行い,その項目の妥当性をWEB会議ツールを用いて調査協力者のハードルを下げることにより,調査実現を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由は,以下のとおりである。第1に,COVD-19が長期化し,本研究課題が開始される以前にWEB会議用機器を各自が別予算で確保していたため,当初想定していた予算額を充当する必要がなくなったためである。第2に,質的予備調査を年度後半に実施する予定であったが,COVD-19が収束せず遂行が困難であったからである。本年度執行できなかった予算は,次年度以降,日本版集団レベルの心理的資本尺度の妥当性と信頼性の検証を目的とした大規模サーベイを調査会社の協力のもと執り行う予定であり,その費用に充てる計画をしている。
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