研究課題/領域番号 |
21K01676
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 与志 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 教授 (80325208)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 情動知能 / 組織行動 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、組織における情動知能(emotional intelligence)について、その「功」と「罪」それぞれをもたらすメカニズムや、異なる結果が生じる条件について明らかにすることを目的としている。2022年度は、関連する内容について文献レビューを継続するとともにベトナムと当初の対象国ではないがスリランカで実証研究を行った。、準実験研究の準備作業を行った。また、当初の対象国ではないが、スリランカの政府職員を対象とした情動知能研修の効果に関する調査を実施した。 まず、文献レビューについては、対象を産業・組織心理学分野に限らず、広く経営学分野全般に広げて、分析枠組み・方法論の検討を続けた。具体的には、2021年度の文献レビューで重要性が明らかになった個人特性にに焦点を絞り、ビッグ・ファイブなどパーソナリティによる調整について検討した。 また、ベトナムで学生の情動知能とレジリエンスの関連について観察研究を行い、自己の情動の認識が正負の感情を媒介にレジリエンスと正の関係を持つことを示した。このほか、情動知能の個人レベルの効果に関する準実験研究の予備的調査を実施した。さらに、スリランカの政府職員を対象とした情動知能研修を無作為割付で実施し、情動知能の学習と付随する行動変容、具体的には組織市民行動と非生産的職務行動に及ぼす効果を分析した。その結果、想定通り学習と組織市民行動には正の効果、非生産的職務行動には負の効果が認められ、学習への効果は研修受講者の誠実性によって強められることが明らかになった。 以上の研究によって、2023年度以降に当初の対象国等で計画している定量的な実証分析の妥当性を高めるための知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象国のうちミャンマーでは実証研究が必ずしも当初計画していた段階まで進んでいないが、ベトナムでは観察研究の成果を出版することができた。また、対象国以外にスリランカにおいて、情動知能研修の効果に関する実験研究を行うことができた。以上のことから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、2023年度に3つの実証研究の方向性のうち、1つに絞り込んで実施することにしていた。これまでの文献レビューに基づく理論的な重要性と予備的な調査等に基づく実証研究の実施可能性の検討を行ってきた結果、このうち情動知能が個人・職務特性と個人レベルの成果を調整するモデルを用いることにした。具体的には、学生や研修機関等の利用者に質問票を配布して、情動知能、成果、媒介変数、調整変数候補を含む個人・職務特性に関する情報を入手する。功罪それぞれの経路を特定する因果媒介分析を中心的な分析手法とする計画であるが、同分析では限られた変数しか扱うことができないため、並行して複数の媒介・調整要因との関係を構造方程式モデリングや分散分析などの統計的手法を用いて定量的な分析を行う。
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