研究課題/領域番号 |
21K01683
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
篠崎 香織 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (50362017)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アナログ技術 / 顧客価値の創造 / メーカーのサービス化 / 組織能力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「クローズド・モジュラー」の製品アーキテクチャの実現に必要な組織能力を明らかにすることである。一つのケースとして医療用やグラフィックス用などのモニターを扱うメーカーに注目してきた。そして、部品と部品や製品と製品の繋ぎ方と、製品になるまでのプロセスや製品と製品を統合するシステム化における部門間、および当該企業と顧客の連携のあり方についての分析を行ってきた。 その結果、次の点が明らかになった。①モニターの核となる電気回路に加え、機構の設計・開発、ソフトウェア開発を独自で行っており、各種部材はすり合わせで組まれることがある。②製品どうしを組み合わせてシステム統合する際は、ソフトウェアが用いられている(クローズド・モジュラー)。③これは、社内にシステム統合化のための製品知識とコア技術を保有していることによる。④電気回路や機構の技術的性質から、技術者間による頻繁な相互調整が必要であるため、蜜な部署間連携体制がとられている。⑤エンジニアを帯同した営業活動をしており、それが顧客価値の創造の源泉になっている。 社内外の連携を重視したモノづくりは、当該企業が、光、音、温度などを連続的に捉えられるアナログ技術をコアとした製品を扱っていることと、製品への評価が製品自体に加えて、使用時の影響も受けることによると考えられる。この仮説の検証と、アナログ技術を使った「クローズド・モジュラー」の製品アーキテクチャの実現に必要な組織能力を具体化していくために、同じような特徴をもつ企業を対象にしたさらなる調査が必要である。そこで、①長期的にアナログ技術の開発に携わっている、②アナログ技術を使った製品の生産と保守などのサービス部分も手掛けている、この2つの条件を満たす企業の抽出をデータベースを用いて行っている。2017年から現在までで該当する企業は10社ほどあることがわかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クローズド・モジュラーの製品アーキテクチャとして、アナログ技術を扱う企業とその製品、および製品群に注目し、今後実施する予定である調査の対象となり得る企業を絞りこむ要件を明らかにすることができた。 組織能力は、要素技術、特許、チャネル、ブランドなどの組織特殊的な「資源」と組織内部に発達したルーティンの集合であると捉えられてきた。本研究では、競争優位になり得るアナログ技術とその活用に関わる社内外の連携に見られるルーティンがどのようであり、どのような意味を持っているのかを明らかにする。 まだ調査対象企業を絞り込むところまでは進んでいないが、2023年度に実施すべき研究の方向性が具体的になったという点から、研究が順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、「アナログ技術」を鍵に抽出した企業について、①アナログ技術の蓄積がある、②製品やシステムを顧客が使用する場面に関わるサービスの提供をしている、この2点を基準に絞り込む。並行して、インタビュー調査項目と質問票調査のための項目の検討を行う。9月末までに複数のインタビュー調査を行い、それの結果をもとに調査票の項目をブラッシュアップする。 アナログ技術を蓄積してきた企業のなかには、買収されたり、倒産するなどによって、現在は存在しないものが少なくない。買収された場合は、買収実施企業が被買収企業(あるいは被買収事業)のアナログ技術を高く評価し、それを獲得する目的によることがある。そのため、可能な限りインタビュー調査の対象に加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の影響を受けてインタビュー調査の実施ができず、2017年からとれている科研費の延長措置を受けている。本研究と2017年からの科研費の研究内容には関連性があるため、図書費や消耗品などの支出をそちらから行った。 2023年度は、インタビュー調査と質問票調査の実施を予定している。そのため、インタビュー調査では、交通費、インタビューデータのテープ起こしなど、質問票調査では、質問票の設計、データの回収などの支出を予定している。 学会への参加も積極的にしていく。
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