研究課題/領域番号 |
21K01687
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 真美 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80289256)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイバーシティ / 経営成果 / 多様性推進施策 / マルチレベル / インクルージョン / エクイティ |
研究実績の概要 |
企業組織において、どんな場合に、どのように多様性施策が個人に認知され、受け入れられ、個々の行動につながるのか、さらにそれが経営成果につながるメカニズムは何か。この問いを明らかにするために、初年度である、2021年度は、次の3つのことを実施した。 第1に、「時系列のアーカイブ調査」に着手した。日本企業の売上高上位100社の外部公開資料を用い、2000年から2020年までの取り組み姿勢の変遷内容を切り口として分析し、国内企業の取り組みの全体動向を把握した。それにより、おおよその傾向を確認した。 第2に、「文献レビュー」を行った。まず、多様性推進施策と成果に関する諸外国の研究結果、およびマルチレベル分析についての文献レビューを行った。その結果、諸外国の多様性推進施策の成果はコンテクストが及ぼす影響が大きいことを明らかにした。また、分析手法として、マルチレベルの重要性が高まっていることを再認識した。 第3に、「国際キャリア比較研究プロジェクト(5C: cross-cultural collaboration on contemporary careers)の研究者との意見交換」である。マクロレベルのコンテクストが及ぼす影響を分析する際には、ミクロレベルの理論との整合性を考察することが必要であると再認識した。また、同プロジェクトの調査結果の一部として、海外のメジャージャーナルに受理され、2本の論文を発表した。1つは、調査の従属変数の1つであるキャリア意識の測定尺度とその妥当性に関して、もう1つは、各国のワークライフバランス制度がいかに個人のキャリア形成においてジェンダー格差を生むかについての論文である。引き続き、コンテクストが及ぼす影響を明らかにするため、諸外国の研究者との意見交換を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、文献レビューとデータ収集を主に行ったため、対面でなくとも、自主的に調査研究を進めることができた。データ収集に関しては、初年度に500社を予定していたものの、100社にとどまったが、一定の傾向を把握することができた。 また、コロナ禍のため、海外学会参加や調査を対面で行うことができなかったものの、10年以上にわたって構築してきた諸外国の研究者とのネットワークの中で、意見交換(オンライン)を頻繁に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に該当する2022年度は、次の方法で調査研究を継続する。第1に、2021年度に開始した「時系列のアーカイブ調査」のサンプルサイズを当初計画規模に拡大し、日本企業の売上高上位500社の外部公開資料を用い、2000年から2020年までの取り組み姿勢の変遷内容を分析し、国内企業の取り組みの全体動向を把握する。第2に、「企業で働く男女に対するキャリア意識と行動に関するアンケート調査」の実施準備を行う。その際、女性活躍推進法施行前(2014年12月末)に申請者が、国際キャリア比較研究プロジェクト(5C: cross-cultural collaboration on contemporary careers)の一環で実施した同規模調査の結果との比較に適した質問票の作成を行う。調査結果を、共同研究者らが収集するOECD24か国と比較し、国の施策、所属企業の取り組みが個人のキャリア意識と行動に及ぼす影響の違いを分析できるようにする。第3に、多様性の取り組みに関連するマルチレベルの実証研究のレビューを行う。第4に、「企業のトップ・ミドル・従業員へのインタビュー調査」を行う。企業レベルで、組織内の一貫性、戦略変革の時期、コンテクストの特徴を明らかにする。第5に、2022年8月Academy of Management、および、オンラインでのミーティングを通じ、海外研究者との情報交換を行い、ハイインパクトジャーナルへの成果公開を目指し、投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集にあたり、サンプルサイズ500社を見込んでいたが、初年度は100社のみであった。そのため、謝金にかかる費用が次年度繰越になった。 また、海外出張および調査が延期あるいはオンラインになったため、翌年度以降に実施となった。
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