研究課題/領域番号 |
21K01689
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小久保 みどり 立命館大学, 経営学部, 教授 (30234735)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リーダーシップ / 緊急事態 / グラス・クリフ現象(効果) / ジェンダー / 作動性 / 共同性 |
研究実績の概要 |
緊急事態や危機に直面した組織のリーダーは、どのように行動すれば危機を乗り越えられるのか、という本研究の大きな研究目的に対して、2021年度は組織が危機に陥った時に女性がリーダーに選ばれる傾向があるというグラフ・クリフ(ガラスの崖)現象について、論文を執筆し、学会で発表した。 グラス・クリフ現象についての研究が、近年国外では多く行われている(たとえば、Ryan & Haslam, 2005)。しかし日本ではまだあまり行われていないので、男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラム,2019)が調査対象国153か国中、121位と低い日本において、この現象が起こるのか、起こるのならその生起メカニズムに文化差はあるのか等について、20歳から65歳までの男女約400人を対象にすでに行った質問紙調査を分析し論文にまとめた。本研究で分かったことは次のようなことである。Kulich, Iacoviello & Lorenzi-Cioldi (2018) は、リーダーの作動性特性が明示されたなら、グラフ・クリフ効果は起こらないことを実証した。本研究ではその研究を元にオンライン実験を行い、日本でも同じ結果になるのかを検証した。結果はおおむね同じであった。作動性候補者はジェンダーにかかわらず、業績の悪い会社のリーダーに選ばれていた。ただ、パス解析の結果は部分的に異なり、そのような結果がもたらされるメカニズムが先行研究と異なっていた。これはそのメカニズムに文化差がある可能性を示唆する結果であった。この一部をオンライン開催のThe 32nd International Congress of Psychologyで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学で学部長職についており、それが予想以上に多忙で、かつ学部の授業と大学院生の指導にも追われて、研究時間がなかなかとれなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度まで学部長をしているので、多忙さは変わらないが、大学院生をやとって、文献の整理をしてもらうなど、時間のやりくりをする。またコロナ禍がおさまってきたので、今後は資料収集の出張もして、以下の点を行う予定である。 1.組織の緊急事態の事例における上層部と現場のリーダーの二つの階層のリーダーシップ行動を、各種事故報告書やその他文献から、組織事故研究やクライシス・リーダーシップ研究の先行研究を踏まえて質的に分析し、先行研究からの知見と統合して、緊急事態にどのようなリーダーシップ行動が効果的なのかを明らかにする。 2.リーダーの緊急時のセンスメーキングの働きについて、先行研究のレビューから明らかにする。そして、各種の緊急事態に陥った組織の事例を分析して、リーダーのセンスメーキングは行われたのか、行われたのならそれはどのような働きをしたのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、プラハで6日間にわたって行われる予定であった国際学会での発表がオンラインとなったため、渡航費と宿泊費が不要となったことと、やはりコロナ禍により出張ができなかったことにより、次年度使用額が生じた。今年度は次の点を明らかにする予定である。1.組織の緊急事態の事例における上層部と現場のリーダーの二つの階層のリーダーシップ行動を、各種事故報告書やその他文献から、組織事故研究やクライシス・リーダーシップ研究の先行研究を踏まえて質的に分析し、先行研究からの知見と統合して、緊急事態にどのようなリーダーシップ行動が効果的なのかを明らかにする。2.リーダーの緊急時のセンスメーキングの働きについて、先行研究のレビューから明らかにする。そして、各種の緊急事態に陥った組織の事例を分析して、リーダーのセンスメーキングは行われたのか、行われたのならそれはどのような働きをしたのかを明らかにする。 上記の目的を達成するために、本研究費は、次のものに使用する。1.各種事故報告書、書籍の購入する。2.学会の年次大会も今年度から対面で行われるものもあるため、旅費、宿泊費に使用する。3.オンライン調査委託費に使用する。
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