研究課題/領域番号 |
21K01692
|
研究機関 | 清泉女学院短期大学 |
研究代表者 |
中島 琢郎 清泉女学院短期大学, その他部局等, 講師 (50813656)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | シンジケート投資 / ベンチャーキャピタル / スタートアップ / ユニコーン / 社会ネットワーク分析 / 2部グラフ / エゴセントリック・ネットワーク / カットポイント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国内シンジケート投資におけるベンチャーキャピタル(VC)のネットワーク構造を解明すると共に、その構造特性が投資成果に与える影響を明らかにすることである。R4年度は、これまでの研究成果を踏まえ、さらなる発展的な研究を推進した。具体的には、(1)(2)の実証研究を行った。 (1)R3年度の研究成果には、主に3つの課題があった。まず、①平均リンク数の閾値を超えたノードのみを分析対象としたため、孤立点がグラフに描写されていなかった。次いで、②媒介中心性を測定指標に用いたため、分断された集団間の仲介機能を誰が担っているのか把握が困難であった。さらに、③投資成果との因果関係を定量的に分析できていなかった。そこでR4年度は、孤立点を含むネットワーク全体を射程に収め、カットポイントという測定指標を用いて、投資成果との因果関係を定量的に分析した。その結果、シンジケート投資を通じた日本の投資家ネットワークは、情報の均質化が起こりやすいことが示唆され、投資成果を向上させるためには、独立した複数の集団に所属し、集団間交流の一翼を担うことが重要であると推察された。 (2)R2~R3年度の研究では、エゴセントリック・ネットワークの位置特性のみに着眼し、それ以外の特性を包括的に捕捉できていなかった。加えて、株式公開(IPO)の有無を基準に投資成果の良し悪しを判断していたため、未公開下で資金調達を行うユニコーンにおいては、その有効性が検証できていなかった。そこでR4年度は、ユニコーンやユニコーン予備軍への投資実績の有無によって、エゴセントリック・ネットワークの特性に違いが見出せるのか、多面的に検証を行った。分析の結果、ユニコーンへの投資実績向上のためには、IPOとは事情が異なり、密接な投資家コミュニティ内部において投資家間を仲介するポジションを確立することが有益であると示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画(令和3~4年度)では、投資ラウンド明細から行列データを作成し、VCネットワーク網の「①ネットワーク範囲(大きさ)」「②N-クリーク(派閥)」「③紐帯の強さ/ネットワーク密度(強さ)」「④ネットワーク中心性(中心的存在)」の経年変化の解明を掲げていた。 これらの研究計画に一部修正を加えながら、R3年度は主に①と④の研究に、R4年度は主に②と④の研究に着手し、その研究成果を学会発表4回、研究ノート1本、学術論文3本(うち、R4年度は学会発表3回、研究ノート1本、学術論文1本)として発表した。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
スタートアップ投資では、シンジケーション組成時のメンバー決定にあたり、リード・インベスターが与える影響は大きく、その存在は無視できない。しかし、過去の研究(R3~4年度)の研究では、リード・インベスターとフォロー・インベスターを区分せず、投資家間のつながりを「無向グラフ」で捕捉してきた。そのため、リード・インベスターの影響を分析結果に反映できていなかった。 そこでR5年度は、リード・インベスターを起点する「有向グラフ」を用いて投資家間の関係構造を捉えると共に、リード・インベスターのみを抽出した結合ネットワーク網を炙り出すことで、リード・インベスターの影響力を考慮した分析を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度に続き、世界的な半導体不足のため、必要な購入物品(メモリ・SSDなど)の納期が大幅に遅延した。また、所属機関で重要な校務を担うこととなり、研究時間が十分に確保できなかった。そのため、当初予定していた研究をR5年度に繰り延べた。以上の事由に伴って、次年度使用額が生じた。 R5年度は、英文ジャーナルへの投稿時に必要となる英文校正費用や、業務の合間を縫って原稿を執筆するために要する情報端末機器の購入等を予定している。
|