研究課題/領域番号 |
21K01699
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
高岡 伸行 和歌山大学, 経済学部, 教授 (90304922)
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研究分担者 |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
吉田 高文 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (60210697)
原田 裕治 摂南大学, 経済学部, 教授 (70313971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビジネス・エコシステム / サステナビリティー / CSV / コレクティブ・インパクト / 資本コストの寄附効果 / ペイシェント・キャピタル / マルチ・ステークホルダー・パートナーシップ / 非営利制度のインパクト |
研究実績の概要 |
研究実施計画では,海外調査・ヒアリングを経て,パイロットの分析モデルを構築し,その仮運用の結果を基に学会報告をし,分析モデルの精緻化を予定していた。 しかし,コロナ禍の影響により,研究会の開催も,海外調査も実施し得ていない。そこで,持続可能なビジネス・エコシステム編成上の特徴を,その機能化のメカニズムに焦点を当て,理論的に検討することを優先した。 当該の概念整理は,実証・調査の分析・解釈の枠組みとして活用し得る。その機能化の鍵は,非営利組織・制度との連携を介した,マルチ・ステークホルダー・パートナーシップの編成である。これによって参加営利組織それぞれにおける投資コストを圧縮すると同時に,各営利事業体の経済性の底上げ効果をもたらす可能性がある。それに作用しているのがいわゆる資本コストの寄附効果である。資本調達コストを低減し,事業体の経済付加価値の創出状況を改善する効果を持つと共に,実質的には投資でありながら,寄附を通じた支出であることで,出資主体の費用圧縮をも同時に可能とする。社会的・環境的インパクトを創出しつつ,その創出コストを営利・非営利の複数の主体で分散的に共有している。 こうしたインターセクターのマルチ・ステークホルダー・パートナーシップの形成が持続可能なビジネス・エコシステム編成をなす特長的要件となっている。 そこで重要な役割を果たしているのが,非営利機関のペイシェント・キャピタリストである。こうした考察は論文にまとめ発表した。 こうした見立てを基に,実証分析や聞き取り調査の対象を洗い出し,サンプルの整理,ピックアップを行い得た。とくに事例研究やビジネス・エコシステムの編成一般との比較検討を行う分析や評価の枠組みとして用いれると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍に起因する国内外の行動制限によって,主に以下の2つへの影響によって,研究の進捗が遅れている。第一に,県境を跨ぐ移動制限によって,対面による研究会開催が行えず,課題検討結果の有益な認識共有が滞っている。第二に,申請していた,海外調査先である豪州への入国が22年2月まで制限されていたため,ヒアリング調査や海外研究協力者との打合せが行えていない。 共同研究の各自の課題の個別検討は行っているが,その統合とそのための情報・認識の共有が十分に行えていないことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
上記理由から,調査およびその分析に基づく事実の検討よりも,当該調査を行うための仮説設定,分析枠組みおよびその理論的検討に比重を置き,研究計画の遅延対策を講じてきた。またそうした枠組みを用いて,分析対象の選別の精緻化,当該対象の基礎情報(たとえば財務状況,組織構造,社会的インフラ状況との関連等)の収集を拡充した。 こうした情報を用いて,定性的な事例研究的探求を通じて,研究実施計画の遂行度を高める。またオンライン,オンデマンド講義を活用し,講義・管理運営業務に支障をきたさない術を講じつつ,当初計画であった海外調査・研修の期間を確保し,海外研究協力者との対面での打合せ機会および調査を実施する。 理論的な仮説拡充および調査対象選定の精緻化・情報収集拡充措置によって,調査・分析対象の絞り込みと調査時間の短縮に寄与すると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は,研究計画の申請上,主に以下の2つの使途に関しての予算措置が大きな比重を占めていた。第一に,本申請研究の研究体制である,4人の共同研究者による年4回の研究会・研究合宿の旅費等,第二に,豪州の海外研究協力者との打合せおよび当該者との共同による海外調査,である。 コロナ禍の影響による,豪州への入国禁止,県境を跨ぐ移動の制限等によって,対面による研究会や海外調査を全く実施し得なかった。2022年度海外調査や海外研究協力者との打合せを実施し得るよう,当該事項に関する費用を確保するため,2022年度に引き継いだ。 豪州への外国人の入国制限は2022年2月末で解除された為,2022年度中盤以降,海外調査およびそこでの協力者への謝金等に主に費用を使用する。また国内の共同研究者との研究成果統合の加速化のため,研究合宿を実施する。対面での打合せや認識共有の効率を高めるために,事前に個別まはた全員でのオンラインによる情報・認識共有の機会を頻繁に設けるよう善処する。
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