研究課題/領域番号 |
21K01706
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
高田 朝子 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (10349194)
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研究分担者 |
恩蔵 三穂 高千穂大学, 商学部, 教授 (10287956)
横田 絵理 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (20277700)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性後継者 / リーダーシップ / 父親からの承継 / ファミリービジネス / よそ者 / 正当性 |
研究実績の概要 |
我が国において根深い後継者イコール男性という構図に、女性後継者という選択肢を示し、その実現にむけての論理的な根拠を示すことは、高い独自性と創造性を持つ。ファミリービジネスにおける承継プロセスは、男性後継者については多く研究がなされてきたが、我が国においては女性後継者に焦点を絞った研究は極めて少ない。本研究は日本の女性後継者に視座をおく。これは我が国のファミリービジネス研究において新しい分野を切り開く独創性と創造性に満ちたものである。どのように自らのスキルを磨き正当性を獲得するのか分からない女性後継者並びにその候補、そして、後継者を育成する側の父親やその側近達にとっても有用な研究になると考えられる。 本年度は主に欧米の文献を精査することに時間を費やした。その結果、なぜ女性後継者になったのかという問いに対しては既存研究では主に二つにカテゴライズできる。ファミリーメンバーの構成上もしくはその時の状況によって、娘より他に継ぐ人がいない(Vera & Dean,2005他)という環境由来のものと、本人が強く希望する(Danes & Olson, 2003他)という立候補によるものである。家族構成や家族の置かれている状態という自分ではコントロール出来ない事象が理由で後継者になる女性と、立候補して後継者になる女性の二種の女性達に光をあてて研究がなされてきたといってよい。後継プロセスの最初から彼女達は将来の社長が視界に入っていて、後継者としての役割を果たすために、どのように振る舞い、対応するのかについて研究がなされていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度計画では後継者ならびに父親への質的調査を実施する予定であったが、コロナの影響をうけ、先方からのインタビュー調査の延期申請があいついだため、計画より遅れることとなった。その反面、多くの文献研究にその時間をふりわけ、調査のフレームワークを再度構築した。この本研究の文献研究から得た新しいフレームワークを、執筆中の論文に応用することができ、結果として新しい考察視点を得ることができた。その結果、学会誌に査読付き論文として採用された。
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今後の研究の推進方策 |
我が国の女性達は、男性優位のビジネス文化の中で自ら進んで管理職や経営者になりたがる者が少ない傾向がある(Hofstede1991; 大内,2012; 高田2016)。このような環境の中で、現在後継者もしくは社長にある女性達の全てが家庭環境で後継者にならざるを得なかった、もしくは最初から後継への強い意志を持っていたとは考えにくい。むしろ、ファミリービジネスに関わる中で何らかの心境の変化が生じ、後継者になる意思決定をしたと考える方が理解しやすい。新たな三つ目の理由、即ち、何らかの心境の変化で後継者となった人々の存在は今まで注目されてこなかった。この三つ目の可能性についての気づきが今後の研究の軸になることが明らかになった。本研究では、従業員規模21名以上の中小企業から大企業までの調査を行う。調査対象は大都市部、地方都市と二つのグループに分ける。二つの地域にわける理由として2017-2020年度の先行研究にて、大都市部とそれ以外では女性後継者への考え方の違いが見られた為である。大都市部は東京、大阪近辺とする。それ以外の地域として、女性社長が多い県上位(帝国データバンク調べ)をとった。2022年度は遅れを取り戻すべく、研究に邁進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍の影響により出張による調査が出来なかった。その分を2022年度に実施する。
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