研究課題/領域番号 |
21K01709
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
壷内 慎二 名城大学, 経済学部, 教授 (30710529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 経営者報酬 / コーポレートガバナンス・コード / 企業価値 / 外国人投資家 / 実証分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2018年改正コーポレート・ガバナンス・コード(以下ガバナンス・コード)に伴う役員報酬の構成および決定プロセスの開示が経営者への規律づけに有効であることを実証的に分析することである。2022(令和4)年度は株主のガバナンスが経営者の規律づけに有効であることを示すために、日経平均225採用企業の経営者報酬データの整理と財務データおよび機関投資家の株式保有データの収集を行い、分析のためのデータセットを作成した。また、2021年度に引き続き機関投資家によるガバナンスが経営政策に影響を及ぼすことを明らかにした。 2022年度に行った機関投資家の経営に対する影響の実証分析では、機関投資家の影響は配当だけでなく、従業員の給与に影響を及ぼすことが明らかとなった。この結果は企業の利益配分を機関投資家が調整している可能性を示唆するものであった。これらは2023年3月に日本経営学会中部部会、2023年9月の日本経営学会第97回全国大会で報告した。 2023年度には、2018年の改正ガバナンス・コードが経営者報酬と企業価値に与える影響を分析した。東京証券取引所プライム市場上場企業のうち、3月決算企業916社について2015年から2022年度のデータを用いて企業業績と経営者報酬について分析したところ、①業績が増えるほど企業価値は上昇する、②その関係はガバナンス・コード改正後に強くなる、③株主の代理変数である外国人投資家が増えると経営者報酬に占める業績連動給の割合が高くなる、との分析結果が得られた。これらの結果から、2018年のガバナンス・コード改正の目的がある程度達成されたといえる。しかし、企業業績に対する経営者報酬の弾力性が低いことや、経営者報酬と従業員の平均給与との差が2000年代初頭と大きく変わっていないことから、開示による効果に疑問も残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では有価証券報告書記載の所有者別状況から金融機関と外国法人等のデータを機関投資家のデータとして用いる予定であった。しかし、QuickFactSet社から機関投資家の属性に関する詳細なデータが入手できることが分かったため、計画時での機関投資家のデータを見直す必要があった。もう一つの理由は、2023年度から大学を移ったことである。2022年度は自宅や研究室の引っ越しや、退職などの手続きのため2022年度に予定していた課題の研究ができなかったこと、2022年度の遅れを2023年度に持ち越したことで、当初の予定が1年遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の分析では経営者報酬の2018年改正コーポレート・ガバナンス・コード(以下ガバナンス・コード)に伴う役員報酬の構成および決定プロセスの開示が経営者への規律づけに有効であることを実証するために、東京証券取引所プライム市場上場企業の経営者報酬データと財務データを用いて、経営者の業績連動給が上がると企業価値がどのくらい上昇するかという分析であった。この分析の結果、ガバナンス・コード改正によって経営者への規律付け効果が認められたが、企業業績に対する経営者報酬の弾力性が低いことや、経営者報酬と従業員の平均給与との差が2000年代初頭と分析対象期間で大きく変わっていないことも明らかとなり、経営者報酬やその決定プロセスの開示が企業価値の向上につながっていない可能性も否定できない。 経営者報酬やその決定プロセスの開示が企業価値につながっているかどうかを明らかにするため、本年度は2023年度データを追加し、経営者の報酬を業績に連動させていない企業群と、業績連動をさせている企業群に分けて分析を行う。改正ガバナンス・コードの影響が経営者報酬を業績に連動させる企業群に強く表れるようであれば、ガバナンス・コードの改正は企業価値向上に効果があったと実証できるからである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では有価証券報告書記載の所有者別状況から金融機関と外国法人等のデータを機関投資家のデータとして用いる予定であった。しかし、QuickFactSet社から機関投資家の属性に関する詳細なデータが入手できることが分かったため、計画時での機関投資家のデータを見直す必要があった。もう一つの理由は、2023年度から大学を移ったことである。2022年度は自宅や研究室の引っ越しや、退職などの手続きのため2022年度に予定していた課題の研究ができなかったこと、2022年度の遅れを2023年度に持ち越したことで、当初の予定が1年遅れた。
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