研究課題/領域番号 |
21K01711
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
川本 真哉 南山大学, 経済学部, 教授 (60468874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MBO / 完全子会社化 / テキストデータ分析 / アクティビズム / キャッシュアウト / 公正性担保措置 / 買収プレミアム / 親子上場 |
研究実績の概要 |
本年度は、次の課題に取り組んだ。①テキストデータ分析の手法を用いて、MBO案件と完全子会社化案件の動機についての比較分析を行った。②MBOへのアクティビスト介入案件の特徴、株主価値の影響に関する分析を試みた。③MBOを含むキャッシュアウト案件を類型化し、公正性担保措置と買収プレミアムの関係性について検証した、④そもそも上場を維持している企業はいかなる特徴を持っているのかについて特定するために、上場子会社に焦点をあてて検討した。 ①については、MBO案件では、短期的な株価の動向にとらわれない、抜本的なリストラクチャリングを断行することを視野としているのに対し、完全子会社化案件では、親会社やグループ企業との連携を深め、グループ全体の価値向上を目指していることが明らかとなった。 ②については、第1に、アクティビストは流動的な所有構造下にあり、介入の効果が期待できそうな企業をターゲットにしていることが判明した。また、対象企業のPBRは低く、アンダーバリュエーションに陥っていることもわかった。第2に、株主の富への影響を、MBO発表後の株価反応で検証したところ、短期的にも長期的にも、ポジティブなリターンが発生していることが観察された。 ③については、公正性担保措置が充実している案件ほどプレミアムが低下する傾向にあり、それら措置が高いプレミアムを提示できない企業のエクスキューズに使用されている可能性を指摘した。 ④については、株価と財務パフォーマンスが良好で、資産削減を行っている子会社が上場を維持する傾向にあることがわかった。また、外国人投資家のプレゼンスの低い子会社が、上場状態を保っているという結果も得られた。さらに、配当率が低い子会社ほど上場を維持しており、利益のグループ外流出の程度が小さい子会社の上場が維持されていることも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①MBO案件と完全子会社化案件のテキストデータ分析、②MBOとアクティビズムの関係性の検証、③MBOを含むキャッシュアウト法制の展開と効果、④親子上場の動機に関する分析について、それぞれ検証を進め、査読誌を含む学術論文への投稿、掲載などが実現したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、支配的株主によるMBO実施企業の固有の特徴をさらに導き出すために、以下の課題に取り組む。 第1に、MBO実施企業の経営者属性が、非公開化の実施、およびエグジットの経路に与える影響について検証する。第2に、再上場を果たしたMBO案件の、再上場の動機とその成果についての実証を行う。第3に、MBO案件においていかなる公正性担保措置が採用されているのか、そしてそれが一般株主の利益にいかなる影響を与えているのかについて、特に特別委員会の役割の観点から確認していく。さらに留意が必要となるMBO取引についてのケーススタディを行う。第4に、本研究を含むこれまでのMBOを扱った実証分析を総括し、MBOの動機と成果に関する体系的な理解を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定データが他資料によって代替可能となったため。次年度使用額については、別途研究遂行に必要なデータ購入にあてる。
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