研究課題/領域番号 |
21K01724
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
平澤 哲 中央大学, 商学部, 教授 (70610963)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会性と経済性の両立 / ハイブリッド組織 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来の社会福祉や公共政策とは異なるソーシャル・アントレプレナーシップという新しいアプローチの創出や実行について、フィールド調査を通じて明らかにすることを目的としています。また、障害者の就労問題を学術的に解明するとともに、問題解決に役立つ実践的な示唆を導き出すことを目指しております。1年目にあたる令和3年度には、当初の計画では、より多くの就労支援施設や社会的企業についてフィールド調査を実施する予定でした。しかし、コロナ禍のため、対人接触を伴う現場調査を遂行することができませんでした。このため、これまでに収集したデータの帰納的分析に焦点をおいて、令和4年度において国際学会で発表できるための準備に専念しました。データ分析では、欧米の共同研究者からの貴重なアドバイスを頂き、ハイブリッド組織という視点から知見を発展させることができました。その結果、分析結果の一部につきましては、令和4年度において、Academy of Management という世界を代表する国際学会の年次大会にて研究成果を発表することが認められました。また、組織研究において世界的な著名な学術誌である、Organization Studiesが主催するワークショップ(令和4年度5月開催)においても発表することが認められました。これらの報告機会は、その後の国際ジャーナルへの論文出版に向けて極めて重要になることから、令和3年度においては、重要な進歩を遂げることができたと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定性的な研究では、文献・インタビュー・観察から収集した多様かつ膨大なデータを分析し、そこから学術的な知見を発展させることを目指します。近年の研究では、発見を裏付けるエビデンスの重要性が一層強調されています。このため、時間をかけて着実に分析を進めました。最初に、インタビューの記録を正確に文書化することに時間を費やしました。次に、文書化されたデータを丹念に読み込み、インタビューイ、一人一人の見方を深く理解するように心がけました。また、現場での観察記録も整理し、組織の出来事を多角的に理解するように努めました。その後、関連する学術文献を幅広く検討し、理論的なフレームワークを構築しながら、分析を発展させました。膨大なデータの帰納的な分析に時間を費やしながらも、丁寧に分析を進めることができた結果、翌年度に、Academy of Management の年次大会において発表するための貴重な機会を得ることができました。実際には、学会報告の審査は厳しく、一定程度の水準に満たない限り、発表は認められません。このため、発表機会を今回得られたことは、研究が進歩していることを裏付けることになります。フィールド調査の拡充や、海外の査読付き学会誌への投稿については、2年目以降の課題として残りましたが、総じて、 当初予定していた作業を殆ど全て終えることができたという点で、本研究は、おおむね順調に進展しております。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、データ分析の精度を高めながら、論文の執筆に専心していきます。研究成果については、Academy of Management やEuropean Group of Organizational Studies といった海外主要学会で今後発信し、その後、国際的に評価される査読付きのジャーナルへ投稿します。ただし、就労問題の解決には、学術的知見の蓄積と発表に留まらず、実践の側面での進歩が不可欠です。このため、本研究から 導き出される実践的な示唆については、一般読者に向けの書籍による公表や障害者就労セミナーでの講演を通じて、より多くの人々が現状の問題を認識し、解決に向けて協力関係を生み出せるよう尽力していきたいと考えております。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していたフィールド調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じました。この金額につきましては、フィールド調査に使用したいと考えております。
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