研究課題/領域番号 |
21K01748
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金 雲鎬 日本大学, 商学部, 教授 (10410383)
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研究分担者 |
東 伸一 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70368554)
横山 斉理 法政大学, 経営学部, 教授 (70461126)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文献研究 / サーベイ調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小売業者が提供する小売業態の価値と、それに対する顧客の評価との間に齟齬が生じる理由とそのメカニズムを明らかにすることである。この目的のために、本研究では、多様な研究方法を用いた混合調査法(mixed method)を採用する。まず、複雑化する小売競争、高度化する消費者の欲求を理解するために、定性的なアプローチを採用して調査を進める。その上で、顧客成果(retail patronage)を結果(outcomes)、小売業態戦略から生じた店舗属性(store attributes)を先行要因(antecedents)として設定し、この間の因果関係の促進・阻害要因と因果メカニズムの究明に取り組む。 この目的のもとで、2022年度には文献調査を行ってリサーチモデルを作り、その研究モデルの精緻化を高める目的でサーベイ調査を行った。サーベイ調査では、小売業者と顧客間の業態認識における齟齬があると思われる海外(韓国)に対する調査も行った。この調査に基づいてリサーチモデルを日韓比較研究モデルに修正することができた。研究メンバーの中でこのモデルに対する理論的含意に対する議論を行っている。この作業を通じてリサーチモデルが固まったらアンケート調査を実施して仮説検証を行う予定である。すでにアンケート調査に向けて質問項目選別や概念妥当性チェックを行っている。さらにここまでの発見事実をまとめている。この成果を学会報告及び論文化としてまとめて社会に発信する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、小売業者が提供する小売業態の価値と、それに対する顧客の評価との間に齟齬が生じる理由とそのメカニズムを明らかにすることである。この目的の達成のために、本研究では、4つのフェーズを設けている。第1フェーズでは、資料整理および文献研究を中心に行う。小売業態が創造する顧客価値については、関連する文献を調べる。小売業態に対する研究蓄積は多くないが、小売のマーケティングミックスが生み出す顧客価値については研究蓄積がある。消費者の業態認識とデジタル化行動については、消費者行動論の研究成果を活用する。第2フェーズでは、探索的な定性調査を行う。消費者のデジタル化行動については海外を中心に研究蓄積があるが、顧客の業態認識に関する議論はほとんど存在しないため、顧客を対象に定性調査を行う。並行して、小売企業を対象に、顧客に評価してもらいたい提供価値について定性調査を行う。第3フェーズでは、定量調査を実施する。定性調査の知見を活かしつつ仮説モデルを構築し、調査・分析する。第4フェーズでは、発見事実の理論的検討と研究成果の発信を行う。 現在(2023年5月時点)までに第1フェーズと第2フェーズが終わり、第3フェーズの準備段階に入っている。すでに定量調査に向けて質問項目の選別や質問の妥当性チェックを行っている。そのために、計画に従っておおむね順調に進展していると言える。さらに海外業態の調査を行ったこともおおむね順調に進展していると言える根拠の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
繰り返しになるが、本研究の目的は、小売業者が提供する小売業態の価値と、それに対する顧客の評価との間に齟齬が生じる理由とそのメカニズムを明らかにすることである。この目的の達成のために、本研究では、4つのフェーズを設けている。第1フェーズ(資料整理および文献研究)と第2フェーズ(探索的な定性調査)が終わっており、第3フェーズ(定量調査実施)と第4フェーズ(理論的検討と研究成果の発信)が残っている。 これからは、この第3と第4フェーズを進める。定性調査の知見を活かしつつ仮説モデルの精緻化を図る。その際に、研究メンバー間でディスカッションをしながらその結果を成果としてまとめる。成果は、論文としてまとめて学会で報告する。そして仮説検証を目標に質問票調査を実施する。仮説検証の結果も論文としてまとめて学会で報告する予定である。学会としては、マーケティング分野において日本のリーディング学会である日本商業学会で報告を行う。そして海外学会としては、小売研究者が集うACRA (American Collegiate Retailing Association) Annual Conferenceで報告を行う。両学会ともに研究報告の経験があるために計画通りに実施できる。さらに論文の投稿先としてJournal of Retailing and Consumer Servicesを検討している。このジャーナルは国際的に著名なジャーナル(Impact factor: 10.97)であり、主に小売り問題を扱うジャーナルでもある。また我々はこのジャーナルに投稿してアクセプトされた経験がある。そのために、このジャーナルをターゲットジャーナルにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としてコロナ過による影響を挙げることができる。今は通常の研究活動ができるようになっているが、2022年度の上半期まではコロナ過により、インタビュー調査ができないなど大きな支障があった。昨年度の下半期にもこの影響がなかったとは言えない。ちょうど昨年度は、フェーズ2(定性調査)を主に実施する年度だったが、インタビュー調査ができない中で定性調査を行うことができなかった。そのために、2022年度の定性調査は年度末に集中的に行った。このような制限によって次年度使用額が生じたのである。 次年度には定量調査と論文執筆、そして学会報告((ACRA; American Collegiate Retailing Association)を計画している。顧客を対象とする定量調査には、データ購入や質問票印刷・配送・回収、そしてデータ入力などに大きな費用がかかる。さらに英語論文執筆に伴い、英語論文の校閲費がかかる。論文がアクセプトされた際には、オープンアクセスにして世界中の多くの研究者と研究成果を共有したい。オープンアクセスにも少ない費用が掛かる。また海外学会報告にも少ない費用が掛かる。特に円安によって海外学会報告にかかる費用、例えば、学会参加費や旅費が以前よりかかるようになった。これからの一連の活動は、研究の執行と成果物作成、そして社会への還元に欠かせない費用である。従って次年度に予算を無駄なく執行することができる。
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