研究期間の最終年度である2023年度には、コロナ禍も下火になり、宿泊業やレストラン業界などにも活気が戻り始めた。引き続き、まねき食品や大阪王将の冷凍食品部門のトップにインタビュー調査などを行なって、コロナ禍の影響と今後のマーケティング戦略についての方針を調査させていただいた。 また、大学の地域リサーチ&イノベーションセンターの業務として、但馬牛のすき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキを特色としている香美町のスキー場の旅館2軒とズワイガニの料理を特色としている旅館3軒のミステリーショッパー調査を2023年11月から2024年2月上旬にかけて実施し、報告書を取りまとめた。調査からは、各旅館ともコロナ禍で清潔さを重視している点と客足が順調に回復している点が明らかとなった。 また、これまで「おもてなし」の共同研究を行なったきた相島淑美神戸学院大学経営学部准教授との研究成果を出版した。その中には、コロナ禍での茶の湯と生け花のケーススタディが含まれている。 さらに、3月8日には「山陰海岸の観光、その未来を考える:山陰海岸ジオパーク × アドンチャーツーリズムの可能性を探る」とのシンポジウムを実施した。佐藤は観光・経営専攻長として基調講演を行なった。 3年間の研究期間を通して明らかになった点は、コロナ禍という経営環境の大激変に直面した経営者は、特に、不確実性下でのマーケティングの特徴であるエフェクチュエ―ション戦略を無意識のうちに展開している企業の業績が急速に回復した点にある。他方で、コーゼーション型マーケティング戦略を展開していた企業は業績の悪化に苦しむ傾向にあったことが明らかになった。
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