研究課題/領域番号 |
21K01759
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川端 庸子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60411683)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 越境EC / 企業間関係 / 新型コロナウイルス感染症 / オンライン消費 / 日系小売業の国際展開 / 中国越境EC / 化粧品 / アイスタイル |
研究実績の概要 |
越境ECの登場は、製造企業や小売企業において国際化の展開に新しい選択肢をあたえ、流通の国際化と競争力に影響を与えている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID 19)のパンデミックは人々の購買方法や決済方法などを含む生活様式の変革に大きな影響を与えた。一時的に国境を超えた人の移動は制限され、訪日来日者数は減少した。しかしながら、オンラインによる消費は高齢者においても増加している。 本研究の目的は、越境ECの進展による国際化の展開への影響と、国内外の競争優位延長による企業間関係変化について理論的かつ実務的インプリケーションを導出することである。今年度は、日本と中国を中心に越境ECの進展と国際化における現状と理論について調査した。国内外における越境ECと流通の国際化についての先行研究レビューを行い、越境ECの歴史や現状および最新の理論について、また既存の流通の国際化の理論について整理した。 これまでの研究成果については、川端庸子(2022)「日系企業による中国越境ECの展開と課題-アイスタイルと資生堂の事例を中心として-」明治大学経営学研究所の『経営論集』の論文にまとめた。また、中央経済社より鳥羽達郎(富山大学)・川端庸子(埼玉大学)・佐々木保幸(関西大学)編著(2022)『日系小売企業の国際展開:日本型業態の挑戦』上梓した。同書では、「第1章 髙島屋」「第15章 日系企業の越境EC」として、研究成果をまとめ執筆した。 そして、第26回埼玉大学経済学部市民講座「変化を続ける経済社会とその今日的課題」という統一課題のなかで「日系小売業の国際展開中国越境ECと化粧品を中心に」というタイトルで一般の方に研究成果を報告した。また、さいたま市では、これまで研究で得た知見を活かして、さいたま市商業等振興審議会の委員を務めるとともに、社会へ広く発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最終目的は、越境ECの進展によりこれまでの企業間関係にどのような影響を与えるのか明らかにしていくことである。そのため、日本と中国における事例収集を行い、以下のプロセスで実証分析を展開する。 令和3年度は、越境ECの進展と国際化展開の現状と理論について整理を行う。越境ECに関する市場規模などの現状は、経済産業省や各種研究所からの公表データをダウンロードして収集した。中国に関する公表データについては大学院博士前期課程の中国人留学生に研究協力を依頼し、データ収集を行った。 研究成果発表および最新の研究成果事例収集は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに鑑み昨年度同様、オンラインを活用してできる限り行った。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、行動が制限され、入構できなかったり図書館や研究所に行って入念に資料収集を行ったり、調査に出向くことができず限界があった。そのため、現在までの進捗状況は、上記のやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降は、越境ECの進展と企業間関係の変化に着目してインタビュー調査を実施したいと考えている。代表企業であるキリン堂などの企業は関西に本社があるため、関東近郊のみならず、関西方面へ事例収集に行けたらと考えている。 また、アイスタイル社の上海支社に加えて、上海以外の都市(広州や大連)でも調査を行う予定であった。令和5年度は、研究成果発表に加えて事例の一般性と特殊性を整理するため、平成25年に国外研究員として所属していた英国リーズ大学などの研究者から欧州の事例との比較について示唆を得る予定である。 ただし、新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑みて、臨機応変に出張を予定を考え、必要であれば、オンラインを活用してできる限り、調査を遂行していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により、行動が制限され、図書館や研究所等の資料を入念に収集したり、調査にでかけたりすることができなかった。また、入校制限などもあり、学生アルバイトによる資料整理等の謝金を伴う作業も行うことができなかった。そのため、当該年の実支出額が減少してしまった。 今後は、新型コロナ感染症の拡大状況を見ながら、できる限り従来の研究計画に近いように資料収集や調査に使用できたらと計画している。
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