研究課題/領域番号 |
21K01786
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
浅野 信博 大阪公立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (10319600)
|
研究分担者 |
林 隆敏 関西学院大学, 商学部, 教授 (50268512)
榎本 正博 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (70313921)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ゴーイング・コンサーン情報 / 資本コスト / 投資の効率性 / 監査上の主要な検討事項 / 株主総会 / 利益調整 / 監査法人 / 経済的影響分析 |
研究実績の概要 |
企業によって開示されるゴーイング・コンサーン情報(継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に関する情報:以下、GC情報と記述)は、多種多様なステークホルダーにとって欠かすことのできない重要な情報の1つである。本研究は、わが国において段階的アプローチによって開示されるGC情報が、重要な不確実性が存在するかどうかの(経営者および)監査人の判断に注目したうえで、どのような経済的影響を及ぼすのかについて、過去の公開データを用いて解明を図ることを目的とする。具体的には、a) わが国企業によるGC情報開示の実態はどのようなものなのか、b) GC情報の開示について監査人はどのような判断を行うのか、c) GC情報は株価や資本コストといった経済的指標にどのような影響を与えるのか、について順次解明していくことになる。われわれは、研究計画にもとづいてそれぞれ作業を実施し、月に1度のペース実施したZoomミーティングで作業のすり合わせを兼ねた報告会を実施した。具体的には、1) わが国のGC情報の開示に関する先行研究を渉猟し3名で分担して解題を進め、2) わが国におけるGC情報の開示制度が他国とは異なることから、ゴーイング・コンサーンの制度の動向についても適宜報告し、3) GC情報のパッケージ・データが存在しないことから、新たなデータ作成の作成を進め、その進捗状況について逐次報告した。以上の作業は、ゴーイング・コンサーン情報は監査人の交代に関係することから、われわれの学術論文の執筆のみならず、研究代表者の浅野および研究分担者の林による『監査人のローテーションに関する研究』の刊行に大きく貢献している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度において、GC情報に関連する先行研究を幅広くレビューすると同時に、GC情報と投資の効率性に関する経済的影響分析を実施した。しかしながら、予想に反して、アーカイバルデータを用いたテストの結果、定立した帰無仮説を棄却することはできなかった。このとき得られた証拠を慎重に吟味した結果、令和5年度において、われわれはもう一度原点に戻って、あらためて別の仮説を検討した。GCに関する監査法人に対するインタビュー調査については、仮説の検討に時間を要したために未だ着手できていない。以上、本研究の骨子である、1) 「先行研究のサーベイ」についてはきわめて順調ではあるが、2)「インタビュー調査の実施」3)「アーカイバル研究の執筆」については予定よりやや遅れている。ただし、研究最終年度である令和6年度においては、この遅れを取り戻すため、既に準備作業を完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
わが国のGC情報は、「段階的アプローチ」によって開示されるが、GC情報のシステマティックな特定化手続きが完了していることに加え、先行研究のサーベイをほぼ完了したことから、今後の研究進捗状況は飛躍的に高まると考えている。今後の研究における喫緊の課題は、令和5年度に引き続き、1) GC情報開示の決定要因分析についての学会報告および論文作成、2) GC情報開示メカニズムの解明を目的としたインタビュー調査の実施及び論文作成、3) GC情報の開示と脱却に関する証券市場分析をはじめとした経済的影響分析に着手することである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度までに、当初予定したCGに関するインタビュー調査の実施および執筆論文の海外査読誌への投稿を完了することができなかったことから、令和6年(2024年)度に補助金の次年度繰越を申請した。令和6年(2024年)度においては、インタビュー調査を実施するとともに、海外ジャーナルに論文を投稿するために、補助金残額の使用を進める計画である。
|