研究課題/領域番号 |
21K01790
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
山口 朋泰 東北学院大学, 経営学部, 教授 (50613626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 実体的裁量行動 / 経済的帰結 / コーポレート・ガバナンス / コーポレートガバナンス・コード / 会計的裁量行動 / 保守主義会計 / 利益平準化行動 / 内部統制報告制度 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,日本企業を対象に,企業のガバナンス構造と実体的裁量行動の経済的帰結の関係を実証的に分析することである。本年度は関連するいくつかの先行研究をレビューした。例えば,Zhao et al. (2012) は,実体的裁量行動が平均的には企業に負の経済的帰結を及ぼすが,損失回避や減益回避のための実体的裁量行動は正の経済的帰結をもたらすことを示している。Vorst (2016) は,業界内の競争が激しい場合に実施された実体的裁量行動は機会主義的なものが多く,企業に負の経済的帰結を及ぼしがちであることを確認している。Beyer et al. (2018) は,情報の非対称性が大きい企業では将来業績改善のシグナリングとして情報提供的な実体的裁量行動を実施するため,実体的裁量行動が正の経済的帰結をもたらすことを明らかにしている。先行研究のレビューを通じて,経営者の実体的裁量行動が企業に与える経済的影響は,当該行動が実施された状況によって異なることが分かった。 また,本研究課題と関連して,オーストラリアのエクセルシア大学のIan Eddie教授との共著であるワーキング・ペーパー「Accounting Conservatism and Income Smoothing after the Japanese Sarbanes Oxley Act」を大幅に改訂し,国際的な学術誌に投稿した。当該研究では,内部統制報告制度が2009年に実施されて以降,日本企業の保守主義会計が増大し,利益平準化行動が減少したという研究結果を提示している。この結果は,内部統制報告制度が日本企業の会計的裁量行動に影響を与えたことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的は,日本企業を対象に,企業のガバナンス構造と実体的裁量行動の経済的帰結の関係を実証的に分析することである。しかしながら,現段階では実証分析まで進んでおらず,先行研究のレビューを実施するだけに留まっている。そのため,「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
分析データの整理が遅れているため,スケジュール管理を徹底し,計画的にデータを整理する推進方策を取る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内・国外の出張が制限され,出張旅費の支出がなかったことが主な理由である。コロナウイルスが収束すれば出張旅費として,そうでなければ分析データの追加購入や消耗品費等で使用する予定である。
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