研究課題/領域番号 |
21K01790
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山口 朋泰 中央大学, 商学部, 教授 (50613626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 四半期開示 / 財務報告の頻度 / 近視眼的行動 / 利益マネジメント / 実体的裁量行動 / 外国人投資家 / ショートターミズム / アクティビスト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本企業を対象に,企業のガバナンス構造と実体的裁量行動(事業活動を通じた利益マネジメント)の経済的帰結の関係を実証的に分析することである。具体的には,強固(脆弱)なガバナンス体制の下で実施された実体的裁量行動が将来業績に正(負)の影響を及ぼすか否かを検証することである。 本年度は株式所有構造が経営者の利益マネジメント行動にどのような影響を与えるかを分析する予定であったが,コーポレート・ガバナンスに関する文献を読んでいく中で,わが国においては「四半期開示を廃止すべきか否か」が喫緊の課題であることを知った。その背景には「四半期開示は投資家にタイムリーな情報を提供できる一方で,企業側にとっては報告書を作成するコストが高く,投資家や経営者の近視眼的行動を助長する可能性がある」ということがある。この喫緊の課題に取り組むため,当初の研究計画を変更し,四半期開示が経営者の近視眼的行動を助長するか否かを利益マネジメントの観点から調査することにした。 日本企業を対象に実証分析を行った結果,四半期開示は実体的裁量行動(事業活動を通じた利益マネジメント)の増加と関連していることが分かった。また,この関連性は外国人投資家の持株比率が高いほど強くなることも発見した。これらの発見事項は,四半期開示が近視眼的行動を誘発すること,それは株式市場からのプレッシャーが強い時に特に顕著になること,を示唆している。 当該年度は,この分析結果を論文として執筆している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画から変更はあったが,企業経営者の実体的裁量行動を別の側面から明らかにすることができたため,「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
経営者が利益を調整する行動には「実体的裁量行動」だけでなく,会計上の操作を通じた「会計的裁量行動」もあるため,会計的裁量行動が四半期開示から受ける影響についても分析し,経営者の利益マネジメント行動の研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に変更が生じたため,物品費と旅費の支出がなかった。次年度にデータベースや統計ソフトの購入と学会発表旅費として使用する予定である。
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