研究課題/領域番号 |
21K01794
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
伊藤 和憲 専修大学, 商学部, 教授 (40176326)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 統合報告 / マテリアリティ / パーパス / BSC / コミュニケーション / 中小企業 |
研究実績の概要 |
IIRCフレームワークには,統合思考と情報の結合性の峻別が不明であるとか,価値創造プロセスの可視化をどのようにすべきといった課題が残されたままである。そこで,バランスト・スコアカードを用いて戦略的実施項目をマテリアリティ設定で用いてはどうかという提案をした。 日本企業の統合報告書の中で,オムロン,ANA,NSKの3社のインタビューに基づいて,マテリアリティの決定プロセスを明らかにした。マテリアリティは,社会的課題として捉えているケースと,経営課題として捉えているケースがあることがわかった。また,マテリアリティ決定には,ミッションやビジョンが関わっていること,ステークホルダー・エンゲージメントを組み込んでいるケース,明示的にはマテリアリティと呼んではいないが,認識しているケースがあった。 コーポレート・コミュニケーションのフレームワークとして,マネジメント・コミュニケーション,マーケティング・コミュニケーション,オーガニゼーション・コミュニケーションに区分されてきた。BSCを導入しているベトレヘムの園病院をリサーチサイトとしてケーススタディを行ったところ,戦略コミュニケーション,マネジメント・コミュニケーション,ステークホルダー・コミュニケーションに区分すべきであることがわかった。 コーポレート・レピュテーションをRepTrakの23の指標に基づいて測定した。具体的には,それらの指標を因子分析して,5つの因子に分解した。各因子の因果関係をSEM(共分散構造分析)にかけて,因果モデルを仮説検証した。 日本の中小企業の経営課題を解決するために統合報告書の作成が機能することを提案した。日本の中小企業では,統合報告書を作成している企業がほとんどないので,イタリアの中小企業のケーススタディを題材に,経営課題への有用性を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究はほぼ終了した。論文投稿が残っているだけである。
|
今後の研究の推進方策 |
マテリアリティに関する論文や中小企業の統合報告の論文を投稿予定である。 マテリアリティについては,日本企業で統合報告書を報告しているすべての企業を対象にマテリアリティの考え方,決定プロセス,決定に関わる担当者などを調査した。 中小企業の統合報告については,イタリアの3社の事例を題材に,統合報告書の作成は我が国中小企業の課題に貢献するかについて検討している。 今回のプロジェクトの範囲を超えるが,今後は,マテリアリティのインタビューを実施して,戦略実行と社会的課題解決の統合の仕方を調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は25万円あります。これは,研究会やインタビューのための旅費に使用する予定です。
|