研究課題/領域番号 |
21K01798
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
威知 謙豪 中部大学, 経営情報学部, 准教授 (00517295)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認識中止 / 認識の中止 / 消滅の認識 / オフバランス / 金融資産 / リスク経済価値アプローチ / 財務構成要素アプローチ / 証券化 |
研究実績の概要 |
本研究では、今後、わが国会計基準設定主体や会計情報利用者・作成者が、金融資産の認識中止に関する会計基準の再検討を必要とした際の「拠り所」の1つとなることを目的として,「金融資産の認識中止に関する各会計基準の設定根拠」と「相違が生じることとなった原因」について,長期的・横断的な観点から検討している。 本年度の研究成果として,威知謙豪. 2021.「米国会計基準における金融資産の認識中止に関する会計基準の設定根拠ー証券化プロジェクト発足当初の検討内容を中心に―」『産業経済探求』(中部大学),第4号,2021年7月, 1-17頁.を公表した。本論文では,米国財務会計基準審議会(FASB)は,1993年3月に開催した金融商品タスクフォース会議において,財務構成要素アプローチ(当時は,財務構成要素パラダイムと呼ばれていた)の基本的な項目を提示し,その根拠として,(1)FASB 概念フレームワークの定義に準拠する,(2)複合金融商品の構成要素の結合・分離等,金融商品に対する金融市場参加者の取り扱いと整合的である,(3)金融商品に組み込まれた法的権利から生じる経済的結果に適合する,の 3 点を挙げたことを確認した。また,この提案の際に,一部の委員より,財務構成要素アプローチについて,当時の国際的動向(国際会計基準委員会(IASC)や英国会計基準委員会(ASC)の動向)とは異なることが懸念すべき点の 1 つとして指摘されたものの,財務構成要素アプローチを支持する他の委員の見解を覆すには至らなかった点を確認した。このことは,金融資産譲渡後の時点で譲渡人(オリジネーター)が支配する資産・負債を認識することが当該取引の経済的結果を財務諸表に反映することになる,という財務構成要素アプローチの根底にある考え方が,当時の金融商品タスクフォース委員の多くの支持を受けていたことを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると評価した理由は,新型コロナウィルスの影響で米国や英国での現地資料調査ができなかったものの,以前より継続して収集してきたFASBの1980年代から1990年代の審議資料をもとに,FASB金融商品プロジェクト発足当初の期間を対象とした研究成果を論文として公刊できたためである。 現在は,(1)英国会計基準委員会(ASC)および英国会計基準審議会(ASB)による1980年代後半から1990年代中頃までに公表された金融資産の認識中止に関する会計基準の設定根拠,(2)国際会計基準委員会(IASC)による1980年代後半から1990年代までに公表された金融資産の認識中止に関する会計基準案・会計基準の設定根拠,(3)国際会計基準審議会(IASB)による2000年代からサブプライム危機・世界金融危機以前までの間の金融資産の認識中止に関する会計基準の検討内容,(4)サブプライム危機・世界金融危機以後から現在までの米国財務会計基準審議会(FASB)による金融資産の認識中止に関する会計基準の設定根拠,(5)サブプライム危機・世界金融危機以後から現在までの国際会計基準審議会(IASB)による金融資産の認識中止に関する会計基準の検討をめぐる動向,(6)サブプライム危機・世界金融危機以後から現在までの企業会計基準委員会による金融資産の認識中止に関する会計基準の検討をめぐる動向,について研究を実施しており,これらの研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている上記(1)~(6)の研究を進める。なお,(2)と(6)についての研究は概ね完成に近づいていることから,(1),(3),(5)の研究に重点を置くこととなる。 (3),(5)の研究で必要となる文献・資料は既に入手済みであるが,(1)の研究については,これまでの研究・調査の結果,イングランド・ウェールズ勅許公認会計士協会(ICAEW)が所蔵する英国会計基準委員会(ASC)および英国会計基準審議会(ASB)による会計基準設定に関連する資料と,大英図書館(British Library)が所蔵する1980年代から1990年代初頭の英国国内銀行の自己資本規制と証券化に関する事前規制に関連する資料の検討が必要であることが判明した。そのため,2022年中にイングランド・ウェールズ勅許公認会計士協会と大英図書館を訪問し,当該資料および関連する資料収集の実施を予定している。 さらに,公表済みの論文および上記(1)~(6)の研究成果を踏まえて,米国財務会計基準審議会(FASB),英国会計基準委員会(ASC),英国会計基準審議会(ASB),国際会計基準委員会(IASC),国際会計基準審議会(IASB),企業会計基準審議会,企業会計基準委員会の各会計基準設定主体がこれまでに公表した基準書,公開草案,討議資料を「全部列挙」し,1980年代後半から現在(2022年)までの金融資産の認識中止に関するの設定の類型化とその変化の方向性を分析することを予定している。その他に,公表した論文,概ね完成に近づいている各論文を取りまとめた書籍の出版についても検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウィルスの影響で米国や英国での現地資料調査ができなかったことにより,繰越額が生じることとなった。 本年度は,これまでに継続して収集してきた資料・文献を用いて,米国会計基準審議会(FASB)による金融資産の認識中止に関する会計基準の設定根拠に言及した論文を公刊することができたものの,研究の進展に伴い,イングランド・ウェールズ勅許公認会計士協会(ICAEW)が所蔵する英国会計基準委員会(ASC)および英国会計基準審議会(ASB)による会計基準設定に関連する資料と,大英図書館(British Library)が所蔵する1980年代から1990年代初頭の英国国内銀行の自己資本規制と証券化に関する事前規制に関連する資料の検討が必要であることが判明した。 そのため,2022年度は,本年度分の研究費と2021年度の繰越額を利用して,イングランド・ウェールズ勅許公認会計士協会と大英図書館を訪問し,当該資料および関連する資料収集を実施する。
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